鬼の矯正特訓だった。ソフトバンク期待の新戦力・上沢直之投手(31=前レッドソックス)が、6日の宮崎春季キャンプで名伯楽をうならせた。

 第2クールの初日、上沢はブルペンにこもって〝悪癖〟を直す反復練習に取り組んだ。「左足がちょっと遠回りして入ってくる癖がある。左足が外旋しないように、内旋したまま真っすぐ入れるように」。全盛期の「独特の間」のあるフォームを取り戻すための練習。鬼気迫る表情の右腕を、4人の投手コーチが食い入るように見守った。

 マウンドの真後ろに立ったコーチがゴムチューブの端を持ち、もう片方を踏み出す側の左足につないで投げる動作を繰り返した。

 プロが口をそろえる「地味にキツイ」練習。矯正メニューを提案した倉野チーフ投手コーチは回数の指示こそ出していなかったが、1セット10回の3セットを想定していた。「僕がブルペンに来た時にはすでに100回以上やっていた。この量は本当にすごくて…」。文字通り、仰天の表情だった。「練習後のコーチミーティングでは『上沢のやり込むすごさ』について話をさせてもらった。ここが今の若い人たちとの決定的な違いだと思ったんで」(倉野コーチ)。

 突き抜ける選手には理由がある。かつて育成入団からメジャーに羽ばたいた千賀(現メッツ)を指導した倉野コーチは「今の人たちは投げ込みはできても、こういう地道なドリルをやり込むこと、反復練習の大切さを分かっていない。改めて僕も勉強させてもらいました」と激賞だった。

 この日が31回目の誕生日だった上沢は「早く宿舎に帰っても特にやることもないですから」と夕方5時過ぎまで自由練習に没頭。「悪い癖を本当に直そうと思ったら回数をこなすしかない。一日も早く良かった時の間をつくるには、この悪い癖が二度と出ないようにしないといけない」と時間を惜しむようだった。

 昨夏に痛めた右ヒジの回復は良好で、完全復活すれば間違いなくエース級の戦力だ。NPB通算70勝右腕は、やはりダテじゃない。