【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】これからお届けするのは、ドジャース春季キャンプでのランチタイムの「1コマ」である。

「オナカ…あれ?『オナカすいた』って日本語でどう言うんだっけ?」(MLB公式サイトのフアン・トリビオ記者)
「ハラー、ヘッタァァァァ!」(オレンジカウンティー・レジスター紙のビル・プランケット記者)

「それはね、前者が丁寧な言い方で後者が…」(私)

 明らかに“何か”が起こっているようだ。ドジャースのキャンプ施設では働き者の若手ブライソンさんが日本人のようにキレイな発音で「オハヨーゴザイマス!」と言えば、広報のフアン・ドラード氏も日本メディアの囲み取材の際に「アト、イチモーン!」と口にしながら区切るタイミングをいつも狙っている。

 ここドジャースでは球団内や米国人番記者たちの間における日本語の使用頻度がなぜか、すさまじいほど高い。前出のビル記者は「興味深いのは僕らがその言葉を『誰に教わったか』。ジェームズ・アウトマン…。彼の親友が日本人で単語をたくさん知っているんだ」。

 そこでジェームズに話を聞きに行ったところ「あははは、子供が使う『プープー』って意味だよね? そんなふうに応用しているの?」と大笑い。そして隣人で小学2年生から親友のタイラー・イケダさんとの思い出をこう語ってくれた。

「幼い頃、よく彼の家で過ごしていたんだ。初めて覚えた言葉は『オイシイ』と『アブナイ』。彼の祖父母が一世で日本語を話していたみたいだけど、彼自身はとてもアメリカン。だから流ちょうな日本語というより、生活の中でちょこちょこ単語を使う感じ。家族ぐるみで仲が良かったから、うちでは家族皆がソイソース(しょうゆ)は『ショーユ』って呼ぶよ。毎年8月には一緒に『オボン』に行ったり、1月1日には餠を一緒に食べたり」

 彼はサンフランシスコ南に位置するレッドウッドシティ出身。同市はアメリカで古くから日本人街が存在するサンノゼからも近く、夏には日系の寺院で「盆踊り」が行われていたという。

「ショウヘイ(大谷翔平)に聞いたら、日本の『お盆』とは少し違うみたいだった。僕が覚えているのはゲーム。僕は踊らなかったけど、踊りや太鼓パフォーマンス、その横でお寺も祈祷のために遅くまで開いていた。輪投げで金魚を勝ち取るのに夢中になったり、ビンゴも大好きだった。金魚は8匹が最高記録」

 ジェームズは「イケダ家は沖縄出身で、ホームパーティーは同じ日本食でもスパムむすびや、カツがたくさん出てきた」と回想する。そして「彼らはお皿から最初に取ることと、最後の1つは取っちゃダメなんだって。それで、いつも僕から取らせてくれたんだ、君は日本人じゃないからいいんだよって」「餠を食べる時、必ず1個か3個食べるようにって。2個はダメなんだってね?」とも。「遠慮」や「験担ぎ」など和の風習を体験していることが興味深い。

「彼らが僕にくれたウエディングギフトは1001羽の折り鶴だった。いただいた贈り物の中でも特別に気に入ってるものの1つ。親戚の叔母ちゃんも呼んで、皆でおしゃべりしながら長い時間、折り続けてくれたんだって。フレームに入れ、結婚式の直前に届けてくれた。とても美しいんだ」

 西海岸に来てから日本人の足跡に触れる機会が増えたが、そんな時はいつだって心が温かい。
 

 ジェームズ・アウトマン 1997年5月14日、カリフォルニア州レッドウッドシティ生まれ、26歳。右投げ左打ち。身長190センチ、体重97キロ。2018年のドラフトでドジャースに7巡目指名されて入団。22年7月31日のロッキーズ戦に「9番・右翼」で先発出場しメジャーデビュー。同試合でメジャー初本塁打を放つなど3安打3打点と大活躍を遂げた。