東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)は〝故郷愛〟を胸に走り抜いた。

 愛知・豊橋市出身の鈴木は、パリ五輪切符を懸けた最後のレースに名古屋ウィメンズマラソン(10日、バンテリンドームナゴヤ発着=42・195キロ)を選択。代表切符を獲得するには、1月の大阪国際女子マラソンで前田穂南(天満屋)がマークした2時間18分59秒の日本記録を上回った上で、日本人最上位に入る必要があった。

 序盤は快走を見せるも、中盤以降に失速。自己ベストを更新する2時間21分33秒(速報値)で3位に入ったが、マラソンでの2大会連続五輪出場はならなかった。

 今大会に向けてはケガを覚悟で自らを追い込んだ。「他の場所だったら多分そもそも挑戦していない。選択肢はここしかなかった。名古屋だから、地元だから走りたいという思いが自分を突き動かした」。特別な心境で挑んだレースでは、沿道から「亜由子コール」が沸き起こるなど、大歓声を背に力走。一時は日本人3番手に転落したものの、加世田梨花(ダイハツ)を抜いて3位に食い込んだ。

 全ては地元パワーがあったからこそ――。「本当にギリギリのところだった。(スタートラインに)立てるか、立てないか。でもきっと他の場所だったら、そのギリギリのラインも攻められなかった。感謝しかない」。レース前から地元の応援を力に変え、本番でも粘りに粘り抜いた。「愛知は本当に自分を育ててくれた場所だし、いつまでたっても、童心に帰るというか、なんか甘えさせてくれる場所というか、初心に帰る場所だなって。そこに甘えちゃいけないけど、なんか純粋に頑張れる場所ですね」と感慨深げに語った。

 今後については「先のことは考えられない」と話すにとどめたが、24日は豊橋市で鈴木亜由子杯が開催予定。さまざまな形で地元に恩返しの思いを伝えていく構えだ。