エースの現在地は――。2月に行われた卓球の世界選手権団体戦(韓国・釜山)で、日本女子は銀メダルを獲得。決勝で中国に2―3で敗れたものの、絶対女王を苦しめた。日本卓球界初のプロ選手で五輪4大会連続出場の松下浩二氏(56)は、中国戦で奮闘した早田ひな(23=日本生命)のパフォーマンスを徹底解説。パリ五輪で金メダルを目指すサウスポーの進化に太鼓判を押した。

 早田が確かな実力を証明した。中国との決勝では、第2試合で東京五輪2冠の陳夢と対戦。過去7戦全敗の〝天敵〟を相手に、多彩なサーブや鋭いフォアハンドなどで試合を優位に進めた。第1ゲームは落とすも、第2、3、4ゲームを連取して3―1で快勝。松下氏は「陳夢になかなか勝つところまではいかなかった試合が多かった中で、東京五輪の女王に圧勝気味に勝った。あの場面でなかなか勝つのは難しいし、そういった意味でも本当に実力をつけたんじゃないかなと思う」と高評価を下した。

 前回の東京五輪はリザーブとして同行。同級生の伊藤美誠(スターツ)、平野美宇(木下グループ)らの雄姿を眺めることしかできなかった。しかし、約2年間に及んだパリ五輪代表選考レースは首位を独走。かねて「五輪での金メダル」を目標に掲げる中で、着実にステップアップを遂げた。松下氏は「今まで積み上げてきたものが実力となって出た感じ。別に何かびっくりするようなところはなくて、番狂わせ的に勝ったというよりも、実力通りに勝っている。中国の選手に勝つことが奇跡というよりも、相手よりも全然強いなという感じだった」と指摘した。

 打倒・中国へ明るい兆しが見えた一方で、〝ラスボス〟の底力も痛感させられた。陳夢に勝った勢いで挑んだ第4試合は、世界ランキング1位の孫穎莎に0―3で完敗を喫した。

 松下氏は「孫は本当に強い。中国の(決勝に出場した)3選手を見ていてもずばぬけて強い。力強さもあるし、速さもあるし、ミスもないし、サーブレシーブのバリエーションも多い。早田選手も全然悪くなかったけど、それを上回っていた。早田選手が悪かったというよりも、相手が強かったという感じ」と分析。早田も先月26日に帰国した際には「本当のエース対決になった時に力不足と感じた。孫穎莎選手が本当のエース」と実力に脱帽した。

 いずれにせよ、パリ五輪の前に収穫と課題の両面を把握できたのはプラス材料。松下氏は「今から新たな(技術などを)付け加えるのはなかなか難しいことなので、今持っている自分の長所をさらに強くするというか、そこを引き出せるような感じにしていけたらいいのでは。世界選手権と五輪は雰囲気なども全く違うけど、やっぱりいい結果が出るように状態を持っていってほしい」とエールを送った。

 リベンジの機会まで残された時間は5か月あまり。中国撃破を目指す早田は、今回の経験をさらなる成長につなげることができるか。