大きな器で〝防波堤〟となった。ソフトバンク・王貞治球団会長(83)が仕事始めとなった5日にFA加入した山川穂高内野手(32)について初めて公の場で言及。昨年5月に強制性交の疑いで書類送検され、8月に嫌疑不十分で不起訴処分となった山川の加入を巡っては、いまだ世間で否定的な声が多い。自身への強い非難を受け入れた上で発した言葉には、深謀遠慮があった。
「いろいろと批判もいただいたが、われわれとしては野球界で生きていく力を持っている人が、その世界で生きられないような世界をつくっちゃいけないと思う。社会的な制裁も受けて、本人もかなり反省している。挽回するチャンスを与えてやるべき」。西武残留の選択もあった。それを選ぶのが筋という周囲の意見も重々承知していた。ただ、それを受け入れられない特異な事情が本人にあったとすれば、NPBに山川の居場所はなくなる。すべてをくみ取り、球団、本社グループの総意で手を差しのべた。
さらに、世界の王はこう続けた。「チームとしては皆さんもご存じの通り、うちは左ばかり。右打者で本塁打王を3回も取っている山川君が入ってくれるチャンスがあったら、手にするのが当然のことだと思う」。ためらうことなく明確な獲得理由を語ったところに、らしい心配りがあった。
球界の顔で、名門巨人の看板だった王会長には〝ファンあってのプロ野球〟という考えが刷り込まれている。山川の補強で強い逆風が吹くことは誰よりも理解していた。獲得意思を前面に出せば、非難の集中は避けられない。それでも戦力補強として「当然」とまで明言。ネットを中心に勝利優先と辟易する声とともに、王会長の人間性を問うような書き込みもある中、矢面に立ってでも真正面から加入を歓迎――。山川にとって、これほど勇気づけられることはない。
「一番ファンを大切にしてきた人。だが、始まる前から再起をかける人間の心をくじく社会であってほしくないという思いが強かったはず」と、ある球団幹部は代弁。「球団としても会長の言葉がすべて」(別のフロント幹部)。いつだって、その言葉は重い。前に進めるために、いろんなものをかぶった。
今後もファンの理解が得られることは難しいだろう。それでも山川の再起を信じ、批判覚悟でサポートし続ける。












