苦い戦いを経て、結束を深めるシーズンだった。今季ソフトバンクは屈辱の12連敗を喫するなど3年連続でリーグ優勝を逃し、前年を下回る3位に沈んだ。現場は小久保新体制に変わり、王イズムの継承と常勝再建にまい進している。鷹ファミリーとして現場を支える球団職員たちも、例年以上に気持ちが入っている。

 選手の疲労が濃くなる7月。チームを襲った大型連敗が球団全体に暗い影を落とした。時は「鷹の祭典」などの球団イベント真っ盛り。事業統括、ブランド推進部門の担当者らも心を痛めていた。新規ファンの開拓は安定した球団経営に必須。球団が潤えば、選手の給料にもはね返る。ゆえに地元以外への発信に日々、力を入れ続ける理由だ。ただ、各地でのイベント試合は過密日程や移動負担などを選手に強いる。開催地の異なる変則的な3連戦、夏場に休養日が消える7連戦、ホーム扱いながら東京での1試合のために福岡からの往復移動は負担が大きい。

「鷹の祭典」は2年連続で1勝8敗。勝ったのはイベント最終戦の7月末だった。負けが込めば、現場のやり場のない思いが不満に変わることも致し方ない。事業・ブランド部門の担当者らは、今季まで主将を務めた柳田悠岐外野手(35)へ申し訳ない気持ちを伝えていた。選手代表として思いを受け止めた柳田はこう返したという。「昔はずっと勝ってきたじゃないですか。負けているのは僕らの実力です。気を使う必要はありません」。チームの精神的支柱が放った言葉に、傷心の職員らは救われた。

 不振を憂えた球団では7月に2度、内々に宮司を球場に招いて神頼みを敢行。イベント前の6月に在福テレビ局とタイアップした願掛けとは状況も意味も大きく異なり、当事者は事態を深刻に受け止めていた。大げさではなく、心を深く痛めている職員も多かった。「柳田選手の言葉をもらって『もっと選手のために、選手の立場に立ってサポートしていこう』という共通モットーが広がった」(球団職員)。継続した強さを取り戻す転換点となり得る出来事だった。

 苦境でこそ気づくことがある。新しい風が多方面から吹き始めている――。