スピードスターが自らを奮い立たせ、鷹党の祈りに応えるように〝災典〟の呪縛を解いた。3位ソフトバンクは30日の2位ロッテ戦(ペイペイ)に6―5のサヨナラ勝ち。延長11回二死満塁から周東佑京内野手(27)が左前へ劇打を放って熱戦に終止符を打った。終盤に3点差を追いつき、守護神・オスナが初の回またぎで勝機をたぐり寄せる全員野球。鷹が再び逆襲のゴングを打ち鳴らした――。
  
 ヒーローは局面を迎え、一球一球つぶやきながら打席に入った。「いけるぞと、フォークも当てられると。打てなかったらどうしようと思うんじゃなくて、大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせて打った」。打線は11回、ロッテの7番手・澤村を攻めた。四球、申告敬遠に増田の安打で二死満塁。周東は負傷交代した3番・近藤に代わって途中出場していた。「回るんだったら二死満塁と思っていた。すごく集中していて、なんの球種を打ったのか分からないくらい」。覚悟を決め、追い込まれてからの5球目151キロの真っすぐを気迫と執念で弾き返した。

 約4万の観衆に見守られ、ナインの祝福を受けた周東は言った。「投手、野手全員で勝ち取った勝利」。終始、追いかける展開だった。まず0―3の5回、今宮の5号2ランで反撃開始。再びリードを3点に広げられた7回は、甲斐が7号ソロを放って相手に重圧をかけるとともに味方を鼓舞した。8回は柳田の適時二塁打、アストゥディーヨの犠飛で同点。終盤に粘りを見せて試合を振り出しに戻すと、投手陣も負けじと勝機をグッと引き寄せた。極めつきは9回から登板した守護神・オスナ。志願の回またぎで2回を無失点に封じると、必勝態勢のベンチは一層引き締まった。

 試合前時点で5ゲーム差をつけられていた2位との直接対決。すでに今カード2連敗を喫して負け越しが決まり、シーズンも6連敗中だった。負けられない理由は他にもあった。今季8戦全敗だった「鷹の祭典」はこの日がシーズン最終戦。昨季も1勝8敗と惨敗した球団恒例イベントはファンの間でも〝鷹の災典〟と揶揄されるほどだった。「本当に多くのファンに足を運んでいただいて、1勝もできない『鷹の祭典』はあってはならないと思っていたので、勝ててよかった」。真顔で胸をなで下ろした周東の言葉は、ナインの思いを代弁していた。

 これ以上、醜態をさらすわけにはいかないとばかりに鷹ナインがプライドを示し、逆転優勝へ踏みとどまったゲーム。藤本監督も「ビハインドの中で、粘って、粘って、勝てたのは大きい」と激勝の価値をかみ締めた。6回の中堅守備で右足を痛めた近藤は幸い大事には至らず、次カードの所沢遠征に帯同する見込み。54年ぶりの12連敗を喫し、7勝15敗と大苦戦した7月の戦いは終わった。気持ち新たに、反転攻勢の8月が始まる。