10年総額7億ドル(約1023億円)の異次元契約でドジャース入団が決まった大谷翔平投手(29)に、地球上が沸いている。そんな中で大谷のドジャース入りを11年前に一度は阻止した男がいる。元日本ハムのGMで、現スカウト顧問の山田正雄氏(79)だ。すっかり大谷の代名詞となった「二刀流」の誕生秘話をはじめ、山田氏が日本ハムへの電撃入団と今回の移籍劇に見た“舞台裏”とは――。

 大谷とドジャースの間には長年にわたる“因縁”もあった。岩手・花巻東高時代の大谷はNPB球団ではなく、そのままMLBに挑戦する意志を固めていた。これを翻意させたのが当時、大谷をドラフト会議で強行指名し、粘り強い交渉を行った日本ハムだった。その中心的役割を果たした一人が山田氏で「二刀流でここまでくるとは想像もつかなかった」と思いを打ち明けた。

 今や大谷の代名詞となっている「二刀流」だが、知られざる“真相”についてこう明かす。
「世の中的には日本ハムの入団交渉の中で提案されたものになっているんだけど、僕も栗山さんも実際にはそういう話はしていないんだよね。当時はそんな発想もないし、確証のないことを言ったらウソになってしまう。どっちをやらせた方がいいのか?『キャンプで両方やらせながら見極めましょう』という流れの中から、いつしか報道で二刀流が独り歩きしてしまった」

 では、どのように球団として「二刀流」で育成していく考えを伝えたのか。

「1月の正式契約の時だったかな。大谷のご両親が報道されている二刀流に関して、入団間もない選手がキャンプでそういうことをして他の先輩選手から反感を買ったり、迷惑になったりしないのかを心配されていた。それを栗山さんが『そんなことはない。選手にそんな余裕はありません』と説得していた。万一、そういうことが起きた時には『自分が必ず間に入ります』ということでご両親も安心していた」

 こうして大谷の獲得に躍起だったドジャースの思いを断ち切るように日本ハムで二刀流として成長し、今や唯一無二のトッププレーヤーに成り上がった。ただ、日本ハム入団を決めた経緯も今回のドジャース入りに共通する“大谷らしさ”が垣間見えたという。

「2012年の交渉の時も発表が12月9日だったのかな。交渉は難航していて突然、その2日前の7日にお父さんの方から『お会いしたい』という連絡がきた。これが最後の交渉で(入団を)断られるのかなと思って岩手に行った。大谷は事前に『全て自分で決めるから、口を出さないでほしい』とご両親に伝えていたそうで、お父さんも直前までその決断を知らなかった。お父さんからは『ああいう子なので親の方から説得することはできない。日本ハムさんのお役に立つことはできません』といって申し訳なさそうにしていた」

 大谷以外、交渉の場にいた誰もがメジャー挑戦を貫くと思い込んでいた中で、本人が発表した結論はまさかの日本ハム入りだった。

 山田氏は「いちいち口には出さないんだけれども、内に秘めた覚悟がすごい。自分がこうと決めたことに対する責任感と実行力は並外れている。一切の妥協を許さない」と大谷の決断に至るプロセスや覚悟の決め方、そして実行力を絶賛する。

 一人で考え、一人で決断する。ドジャースと途方もない契約を交わして世界をアッと驚かせた大谷は今後、どのような道を歩むのか…。

「一般人には何が何だか分からない金額で、おカネには無頓着な大谷本人もきっとそうだと思う。これからの10年間が本当に大変。生身の人間ですから、いい時ばかりではなく必ず悪い時もある。ただでさえ、アメリカは厳しい。これだけの金額をもらうわけだからよりプレッシャーも大きい。でも、大谷がそれに向かう覚悟を決めたわけですから、彼なら我々の予想の上を行ってくれそうな気がする」

 人類の想像のはるか上を行く大谷は新世界を創造していきそうだ。