日本、台湾、韓国、オーストラリアのU24代表でしのぎを削り合った国際大会「アジアプロ野球チャンピオンシップ」は井端監督率いる侍ジャパンが激闘を制し、大会2連覇を成し遂げた。来年11月開催のプレミア12から2026年3月のWBCへ向けて各代表チームの主力は間違いなく、この世代が中心となる。〝金の卵〟や〝未完の大器〟も数多く出そろった今大会の主要メンバーをMLB関係者はどう見たのか。ネット裏に陣取ったメジャースカウトに未来のエース候補4人の「リアル評価」を聞いた。

 井端監督率いる日本代表にとって今大会は初陣で「全勝V」を成し遂げ、最高のスタートとなった。そんな新生・侍ジャパンの中でMLB関係者から目を引いたのは隅田知一郎投手(24=西武)だ。16日の韓国戦に先発し、7回3安打無失点7奪三振。キレのある最速149キロの直球、120キロ台のチェンジアップを軸にした左腕の投球内容に韓国・柳仲逸監督(60)も「攻略は難しい」と脱帽したほどだった。

 メジャースカウトの1人は「チェンジアップがよく抜けていた。今年は真っすぐがバラつかなくなったことで、より威力が増したように感じる。1年目から連敗が続いてしまい、結果は出ていなかったけれども試合を壊した登板は少ない。これから、どんどん結果もついてくる投手になるはずだ」と今後の急成長に太鼓判を押す。

 ただ「今すぐにMLBで通用するかは別の話」と慎重な見解を示すことも忘れなかった。その上で「真っすぐにそれほどの球威があるわけでもなく、同じ左腕の今永(DeNA)ほどのキレはない。横手からフォームのしなりはあるけど、球の出どころもそこまで見にくくはなく、威圧感を覚えるわけでもない。(同じ西武OBで現ブルージェイズの左腕)菊池とタイプ的には似ているが、体の馬力やパワーはまだまだ違う」とさまざまな課題を指摘。とはいえ、MLBの多くのスカウトはメジャーでも需要の大きい左腕の逸材として「チヒロ・スミダ」の名を脳裏にインプットさせたようだ。

戦況を見守る韓国代表の文棟柱(右)
戦況を見守る韓国代表の文棟柱(右)

 一方、韓国代表の若き背番号1・文棟柱投手(ムン・ドンジュ=19、ハンファ・イーグルス)は大会前からMLB側の注目を集めた逸材だ。今季のKBOで史上最速の160キロをマークし、韓国球界を背負って立つ「未来のエース」。国際デビューとなった今大会では15日の台湾戦で先発し、速球は最速154キロを計測したものの、5回2/3を5安打2失点5三振4四球と制球面でやや課題を残す結果に終わった。

 不完全燃焼だった文の投球内容には前出のMLBスカウトも「まだ完成度は低いよね。直球も、変化球も制球しきれていない。スタミナ面もいまひとつ」と手厳しい。それでも「まだプロで何年も投げていない投手だから、そこは仕方がない。もちろん今後が楽しみな投手。19歳の時点でこのサイズなら、もっとスタミナ面でも伸びしろがあるように思える。ダルビッシュ(パドレス)も高卒2年目あたりから急激に体とか、投球の質とかも変わっていった。ダルのような変化が起きれば、国際舞台でももっと勝てる投手になる」と数年以内のジャンプアップに期待を寄せた。

台湾代表の古林睿煬
台湾代表の古林睿煬

 そして台湾代表の古林睿煬投手(グーリン・ルェヤン=23・統一ライオンズ)は今大会でMLBでの株を大きく上昇させた「特A」レベルの右腕だ。15日の日本戦で先発マウンドに立ち、侍ジャパンの強力打線を相手に最速154キロの直球、カーブ、チェンジアップなどを交え、6回一死まで、パーフェクト投球を披露。森下から一発を被弾しながらも6回2/3を3安打1失点無四球と好投し、MLB関係者たちにもインパクトを与えた。

 前出のスカウトは「今大会だけなら間違いなくナンバーワン投手。直球もスピンが利いていて、参加国の中では最もレベルの高い打者がそろっていた日本の打者でも、ほぼ前に飛ばせていない。今、NPBに入っても間違いなく、先発ローテに入れるだろうし、MLBでも将来、やれるだけの力量は持っている」と高評価。そして「『直球』は、8点満点で『5』。これは日本人メジャーリーガーで評せば、前田(ツインズ)のレベルと同等。強いて言えば、スプリットのような縦に鋭く落ちる変化で、ゴロを打たせるような球種が欲しい。それがあれば先発で、もっと楽に長い回を投げられるようになる」とも付け加えた。台湾球界関係者の話を総合すると、統一側は古林について来年オフにポスティングシステムを使ったMLB挑戦を容認する方向で検討しているという。

オーストラリア代表のジャック・ブシェル
オーストラリア代表のジャック・ブシェル

 意外な〝ダークホース〟としてMLB関係者の視線をさらったのは、オーストラリア代表のジャック・ブシェル投手(18=ABLアデレード・ジャイアンツ)だ。今秋開催のU18W杯ではエースとして3試合で2勝、防御率1・40。今大会でも18日の日本戦に先発し、2回2安打1失点と18歳ながらも鮮烈な投球内容でNPBスカウトにも強い印象を残した。

「右のオーソドックスな先発タイプ。W杯もチェックしたが、今後どう化けるか。オーストラリアの選手は傾向として、筋肉と骨格の発達がアジア人の中では遅い。彼は直球のアベレージが88~90マイル(約141~144キロ)。ただ過去のオーストラリア人メジャーリーガーでは25歳のシーズンで98~100マイル(158~161キロ)まで伸びたことがある。体の成長速度が遅い半面、オーストラリア人は骨が断トツに太い。全ての要素が整ったときの爆発力は、MLBでも力勝負ができるだけのパワーを秘めている」(前出のスカウト)

 数年後は、この〝プロスペクト4投手〟が海の向こう側で羽ばたいているかもしれない。