【台湾発】野球のU―18W杯(台北・天母野球場)日本代表が10日に行われた決勝戦で台湾戦に2―1で勝利し、悲願の世界一に輝いた。試合直前には主将の小林隼翔内野手(18=広陵)が、大会主催者のWBSC(本部=スイス)から出場不可の判断を下されるアクシデントがありながらも、全員野球ではねのけた。苦闘の末の世界一――。その裏側では、あるドタバタ劇が起きていた。

 馬淵采配がズバリ的中した。1点を追う4回に四球で無死一塁とすると、ここから2者連続のバントで一死一、三塁と好機を拡大。さらに、ここで相手の意表を突くスクイズが相手の悪送球を誘い、2者が生還して逆転に成功した。投げては先発したエース・前田が7回1失点で完投。最後の打者をニゴロに打ち取ると、マウンド上では歓喜の輪が広がった。

 台湾の夜空に5度宙を舞った馬淵監督は「いやぁ、もう…。勝てて、選手、コーチたちのおかげでいい思いをさせてもらいました」と感慨深げな様子。その目には涙も浮かんでいたが「思わず出たんですけどね。こういうこともあるんでしょう、長いこと野球やりよったら」とくしゃっとした笑顔を見せた。

 歴史的勝利までには紆余曲折もあった。チームを支えてきた主将の小林が3日の米国戦の守備の際に負傷して検査入院。左脇腹の打撲と脳振とうと診断された。6日に退院すると、NPBの脳振とうからの復帰プロトコルに添い、この日の試合に向けて慎重な調整を継続。チームドクターと台湾側ドクターの判断でこの日の試合での復帰が判断されていた。しかし、主催者のWBSC側が決勝戦当日の朝に下した判断は「出場を認めない」とのものだった。

試合前、元気な姿で練習した広陵・小林隼翔
試合前、元気な姿で練習した広陵・小林隼翔

 7日以降も連日報告し、出場許可の照会を求めたが、それまでの返答は一切なし。出場を認めない理由を求めても全く説明されず「われわれとしては、そういった対応については大変疑問に感じている」と不信感すらにじませていた。

 これには相手国・台湾側からも「小林君のことを思ってのことだろうけど、判断を下すWBSCのドクターは現地にいないわけで…。実際に診てもいない、その上具体的な説明や連絡への返答もなしに、一方的に出場機会を失った本人が一番悔しいと思う」と同情の声が寄せられた。

 それでも、当の小林本人は気落ちせずに自らの役割を全うした。「みんなから『お前を世界一の主将にしてやるから』ってすごい言ってもらって、うれしいなという思いを持ちつつ、出る選手だけに頼り切らずに、自分が何ができるかっていうのを考えて。チームの一員ですし、やっぱり主将なので。そういったことを意識してやりました」

 その言葉通り、小林は率先して練習補助を行ったほか、試合中にはベンチから誰よりも大きな声でナインを鼓舞。思いがけない逆境もはねのけ「悲運の主将」は「世界一の主将」になった。