問題の根は深そうだ。水泳の世界選手権(福岡)で銅メダル2個に終わった競泳日本代表チームで、内紛が勃発している。代表選手から日本水泳連盟(日水連)の強化方針に対して不満の声が上がる一方で、9~10月のアジア大会(中国・杭州)で日本選手団入りが決まっていた平井伯昌コーチ(60)が参加辞退の意向を表明。チーム内での意見の相違が原因とされているが、日水連だけでなく選手側にも問題点が浮かび上がってきた。

 今回の騒動ではまず、現役選手やOBから苦言が続出した。女子800メートルリレーに出場した五十嵐千尋(28=T&G)は自身のSNSで「結果だけを選手に求めて、サポートする環境もなく、選手に向けて具体的な対策、改革がなければ今後も変わることはないです。もっと選手の意見に耳を傾けるべきです」などと投稿。ロンドン五輪男子200メートル平泳ぎ銅メダルの立石諒氏(34)も自身のSNSで「現役の代表にここまで言わせたら絶対ダメでしょ」と猛批判で続いた。

 日本は「競泳王国」として世界の舞台で大活躍し、数々のドラマで列島を歓喜の渦に包みこんできた。ところが、7月の世界選手権のメダル数は21世紀以降で最少に終わるなど、近年は苦戦を強いられる。原因の一つとして、海外経験の不足を指摘する意見が出ている。ある五輪メダリストは「例えば欧州グランプリに自費でもいいから行きたいと言っても、日本連盟が許可を出してくれないので海外遠征に行けないとの話を聞いている」と証言。日水連と選手の意向がかみ合わず、大きな亀裂が生じてしまったという。

 選手が競技に集中できる環境を整えるのが日水連の役目。だが、来年に迫ったパリ五輪のプロジェクトリーダーを務める平井コーチがアジア大会の参加を突如辞退するなど機能不全に陥っている。

 こうなると日水連に大きな非があるように見えるが、数々の選手を育てたあるコーチは選手サイドにも問題点があると指摘する。「近年は選手とコーチの立場が入れ替わってしまっている。選手を育てようと思って指導をしても、選手に嫌われたらすぐにコーチを外される。あまりに選手が力を持ちすぎるせいで十分な指導ができなくなっている。私は気にしていないが、若いコーチほど気にしてしまう」。実際に黄金時代を知るOBも「最近の選手は、すぐコーチを代えている印象がある。あれだと厳しいですよね」と顔をしかめた。

 パリ五輪まで残り1年を切ったが、各方面から「正直間に合わないと思います。このままだと競泳ニッポンの復活はしばらくないのでは」と悲観的な観測が強まっている。日水連、選手の双方が意識を変えなければ、かつての栄光は過去の遺物となってしまう。