紆余曲折を経てWBCの舞台に立った中国代表・真砂勇介外野手(28=日立製作所)は、悔しさをこらえきれなかった。4戦全敗で1次ラウンド敗退。「僕が足を引っ張った」。好機で凡退し、チームを勝利に導けなかった中国の主砲。その言葉の真意は実に深かった。
昨秋、10年間プレーしたソフトバンクを戦力外となった。その数か月前に結婚。独立リーグから再びNPB入りを目指す考えを封印して、生活の安定がかなう社会人野球の強豪・日立製作所で野球を続ける選択を下した。両親が中国出身。使命感を持って、胸に「China」と刻まれた赤いユニホームを身にまとった。
1次ラウンド初戦、くしくも相手は日本。武者震いと緊張を必死に抑えて打席に立った。チームは中盤まで接戦を演じ、自身も左翼線へ痛烈な二塁打を放つ意地を見せた。続くチェコ戦は勝負所での凡退が響いて逆転負け。勝利目前での敗戦に、主軸として潔く責任を背負い込んだ。
野球においては「後発国」の中国代表。その一員として戦う国際大会ゆえに、真砂には特別な思いがあった。「中国では野球はまだまだマイナー。その中国が『なかなかやるじゃないか』ってところを見せたかった。だから、あそこで僕が打っていれば…という場面がいくつかあった。本当に悔やまれます」。野球が世界に普及し、その文化が根づくには、強豪国以外のチームが力をつけて実力差を埋めていく必要性を理解している。
昨年のサッカーW杯カタール大会の賞金総額が約600億円に対して、第5回WBCの賞金総額は約19億円。世界的イベントとしては、その市場規模から言っても権威に乏しい。世界最大の人口を誇り経済発展も著しい中国やヨーロッパなどが国際大会で結果を残し、それをきっかけとして競技人口の増加につなげたい――。中国代表・真砂には、確かにその使命感があった。
「僕たちが頑張れば、中国が、世界が、この大会が盛り上がる。両親がいて、いろんな人の理解と協力があって、この舞台に立たせてもらった。僕という人間の半分以上が野球でできている。足を引っ張って、本当に申し訳なかったです」。最終的に唯一の安打が日本戦の一打だった。ピュアな男らしく、力みまくった全14打席。真砂の〝恩返しの戦い〟が幕を閉じた。












