【球界こぼれ話】「まさかここまでの人気者になるとは…」
このところ侍ジャパンを取材していると、報道陣や球界関係者からこんな声をよく耳にする。侍ジャパンに加入した「メジャー組」の一人、ラーズ・ヌートバー(25=カージナルス)のことだ。
今年1月末に栗山監督からWBC出場選手としてヌートバーの名が挙がった際には「日本でのプレー経験がないこと」や言葉の問題から識者を中心に日本代表入りに難色を示す指摘が散見された。ところが、3月上旬に侍ジャパンに合流するとすぐにチームに順応。今では大谷やダルビッシュらと並び日本代表の顔になりつつある。
昨季米メジャーの名門・カージナルスで108試合に出場。右翼手のレギュラーを勝ち取った逸材だ。だがメジャー実績だけで異国の代表チームになじめるほど球界は甘くない。にもかかわらずヌートバーは、なぜわずか10日あまりで侍ジャパンに適応し、実力を発揮できたのか。周囲のケアや配慮があったことは間違いないが、大きな要因はやはり本人の「努力」と「人間性」のたまものだろう。ヌートバーが代表入り後初めて実戦に出場した3月上旬の大阪での強化試合。試合前から本人を注視してみたが、彼の「チームに溶け込もう」という姿勢と心遣いは想像以上だった。
練習前のベンチではナインの座る場所を自身の目で確認。邪魔にならないよう道具を置いたかと思えば、すれ違う選手らには笑顔で会釈を続けていた。通訳なしでナインやスタッフと交流を試みることもしばしば。練習中も偉ぶることなく、常に周囲の動きを優先しながら、自身の調整をする姿が目立っていた。
打撃練習の前には、持参した滑り止めの「ロジン」をベンチ前で取り出すと、周囲への飛散を防ぐようそっとビニール袋を開封。誰もいないことを確認しながら静かに取り出し、バットや両腕に少しずつ塗布し始めた。使い終わった直後には再び元のビニール袋にしまい丁寧に密封。すべては周囲への配慮だった。
外国人選手がロジンを使う際には、周囲が真っ白な煙霧に包まれるのが一般的である中、ヌートバーはそれを良しとしない。来日する外国人が容易にできない、この日本独特とも言える無言の気遣い。これを合流当初から自然体でできていたからこそ、ヌートバーはナインに愛され即座に結果を残せたと言っても過言ではない。
実力や実績も代表入りには大切だが、日の丸を背負う戦いにはチーム内での協調性、同調性がより重要視される。そうした面でも非凡な才能の持ち主だったのだろう。
いろいろな意味で日本人以上に日本人気質を持つヌートバー。大谷らとともに日本の救世主として、チームを世界一に導く可能性を十分持ち合わせている。












