【今村猛 鉄仮面の内側(23)】引退してからよく聞かれる話題なので、将来はカープのユニホームを着て指導者になるつもりがあるのか、そういう話題に触れたいと思います。

 これに関してはまず、手前の話で広島カープから僕が選んでもらえる人材になっていなければいけないですし、僕からの発信ではどうにもならないと思うんです。

 その上で僕自身が現時点でどう考えているかというと、今のところは考えてないというのが正直なところですかね。こんなことを話すこと自体、どうなんでしょう。どこからか候補に名前が挙がってるってわけでもないじゃないですか。

 ドラフト1位で入団したからには、将来的な指導者への手形みたいなものは条件の中になかったのですかという質問も受けることがあります。それも正直に答えます。僕にはありませんでした。

 僕と同郷の同級生・大瀬良大地投手なら大学生からドラフト1位で入団したわけですから、もしかしたら将来は監督になるのかもしれません。性格もいい人ですからね。もしも、大瀬良監督からスタッフ入りを打診されたら…。そんなふうに聞かれても、もしもの話をしても仕方ないですからね。

 自分の中では可能性として指導者という道を現状は消していますね。ほぼそんなことは将来的にも起きないでしょって思ってます。それが将来的には気が変わる可能性もあるかなって、そんな大事なことを気分で決めるなよって話なんですけど、遠い将来には気は変わってるかもしれないですけどね。

 というのはその時の僕の状況によると思うんです。現状は今やりたいことがあるかなっていうのが自分の考えてる気持ちなんです。今はそっちに進みたいと考えています。

 昔と違って今は社会の構造自体が変わろうとしているなどとよく言われています。そのスピードもものすごく速い。コロナ禍で仕事のオンライン化が強制的に十数年分進化したなどと言われる時代です。

 プロ野球選手の引退後の選択肢というものもこれからどんどん変化していくんだと思います。もちろん生活をしていくためには収入を得なければいけません。会社なり、どこかの組織に身を置いて、雇ってもらう立場になるのも選択肢かもしれません。でも今は自分の思う道でチャレンジしてみて、そこから考えようと思っています。

 方法や選択肢は数えきれないほどあって、どんな結果になろうと自己責任です。僕自身が確固たるビジネスオーナーとしての立場を確立していれば、将来的にユニホームという話をいただいた時にしかるべき判断ができると思うんです。

 今までやってきた野球選手という職業は個人事業主の集団でした。カープという組織、会社があって、そこにいろんな個性、才能を持ったアスリートが優勝という目標のために集まる。そこに身を置いたことも勉強でした。

 いわゆる普通の仕事をしていれば今の年齢で深く考えなかったかもしれません。でも、僕の場合は30歳でプロ野球選手という人生がバンッと切れたわけです。ここを自分なりに考え、切り開いていくのが当面の目標です。