野球殿堂博物館は13日に今年の野球殿堂入りを発表し、外国出身選手最多の通算2017安打を記録した元DeNA監督のアレックス・ラミレス氏(48)、阪神で2度の3冠王に輝いたランディ・バース氏(68)らが選ばれた。プロ野球界に数々の伝説を残したレジェンド助っ人たちの〝秘話〟を、当時を知る番記者やコラムニストらが一挙公開する。

【取材の裏側 現場ノート】確か2006年夏のことだった。東京遠征中に「おう、今日はラミとメシやからのう。夜は空けとけ」。川藤幸三氏にそう言われ、都内の高級しゃぶしゃぶ店にお供させてもらった。

 現地に到着すると若かりし日のラミレス氏が、座敷の畳にどっしり座っていた。

 当時、川藤氏は50代半ばとは思えない大食漢。ラミちゃんは30代前半で全盛期だった。2人のモンスターが驚異のペースでお酒と高級お肉を口の中に放り込むと、大皿が次々と空になっていった。

 会話もじゃんじゃん弾んだ。ただ、途中である種の不安を覚えずにはいられなかった。

 川藤氏は終始、独特の関西弁。「ラミちゃん、そうやのう。おう、ワシも分かるで。そうかそうか」と豪快に笑う。

 対するラミちゃんも意気投合し「イエース、イエース。ワハハハハ」とガッチリ握手を交わす。

 しかし、この川藤節と日本語混じり英語の不思議な会話でどこまで通じ合えているのか? そんな疑問を2人にぶつけてみた。

 するとラミレス氏は「もう日本も長いね(当時来日6年目)。リスニングはほぼダイジョウブデース」とさすがの適応能力。一方の川藤氏は「ワシは何を言うとるかよう分からんわい。しょうもないこと聞くな」と豪快に笑い飛ばした。

 これで終わればコント。ただ、そこから続いた川藤氏の言葉が忘れられない。

「ワシに英語は分からん。でもなあ、ラミが何を言おうとしとるんか、目を見とったら分かるんじゃ。同じ人間やないか。言葉なんか関係あるかい。こんなややこしいオヤジと母国からはるばる日本で酒の相手をしてくれとる。この溶け込もうという姿勢が日本で成功しとる秘訣よ。ランディ(バース氏)もそうやったわい」

 昭和の時代、甲子園のロッカールームで将棋に興味を持ったバースを指南したのが川藤氏。「あの時代でもランディは日本の野球を下に見ず、ワシらと打ち解けようとコミュニケーションを取ってきよった」と述懐する。

 時代を超えて見えたラミレス氏とバース氏の共通点。異国で発揮した「融和力」が殿堂入りの一因であると確信している。(楊枝秀基)