【取材の裏側 現場ノート】カタールW杯での激闘を終え、日本代表が帰国した。「ブラボー!」の一言で、またも人々の心をつかんでしまったのはDF長友佑都(FC東京)。思えば20代の頃から天才的に言葉扱いがうまかった。

 イタリア・チェゼーナに移籍する前のある日。当時まだ23歳の若者は、休暇中に焼き肉とウナギを食べたことを明かした後、サラリと「牛のように力強く、ウナギのようにひゅるひゅると左サイドを駆け上がります」と続けた。「なんだこのコメント力は!」と思った。頭の回転が速く、サービス精神も旺盛。われわれ報道陣にまで元気をくれた選手は後にも先にもそういない。

 ミスをした時の考え方でも、覚えている言葉がある。2009年9月、国際親善試合のガーナ戦で、自身のハンドでPKを与えて先制を許した場面があった。この時こそ「自分のメンタルが強くなったと実感した場面だった」と明かし、後のインタビューで次のよう語った。

「いつもなら『やってしまった!』だったが、この時は『ああ、自分はいい経験しているなあ。こんな経験なかなかできないわ!』と切り替えられた。いつまでも落ち込んでいたら、チームにとってもよくない。トライしてミスする分には次の成長がある。でも、消極的なプレーでうまくいかないときは、成長はないから」。この時もまだ22歳。どこでこの前向きさを学んだのか、と驚いた。

 あれから10年以上がたち、いくつもの失敗と向き合ってきたであろう36歳は、カタールで失意にあった後輩を励ました。クロアチアとのPK戦で、1番に蹴ったが決められなかったMF南野拓実を「彼は強い。彼は自分から手を挙げて『蹴る』と言った。その勇気というものを僕は誇りに思うし、感謝したい」と称賛。批判に転じがちなムードを一瞬で打ち消してみせた。

 また、MF伊藤洋輝らに対する非難が殺到した時も「それは若手選手じゃなくて(若手が躍動できるような)雰囲気をつくれなかった僕にもっと批判が来るべきだと思う」と巧みにかばった。

 マイナスをプラスに変えてしまう言語能力でも、16強入りに貢献した長友。去就が注目されるが、プレーだけではなく、発信力でも後継者を育ててほしい。(スポーツ担当・中村亜希子)