さあ、腕の見せどころだ。負ければCS進出の望みが絶たれる巨人は、1日からDeNAと今季最後の2連戦(横浜)に臨む。まさに崖っ縁の先発マウンドとなるのは戸郷翔征(22)。自身初の2桁勝利に到達して飛躍の年としたわけだが、右腕の真骨頂は何事にも動じない強心臓ぶりだろう。後輩は先輩に絶対服従の体育会系にあっても、垣間見せていた〝すごみ〟とは――。

 いよいよ大一番だ。チームは9月30日に東京ドームで全体練習を行い、公式戦最後の2試合に向けて最終調整。逆転でのCS進出には2連勝が最低条件となる中で、まずは戸郷が先陣を切る。

 練習を終えると「絶対に勝たないといけない試合なので、そこは覚悟して挑むつもりです。今まで通り変わらず、全力で挑めるような状況はつくってきたつもり」と決意を口にした。ただ、やはりひと味違うのは肝の座り方だ。絶体絶命の状況にあっても「それなりのプレッシャーはかかると思うので、ひとつ楽しみながら。CSに向けて調整しながらやっていけたら」と風格すら漂う言葉を残した。

 今季は開幕から先発ローテーションを守り、チームトップの12勝をマーク。この最終登板で勝利投手となれば、ハーラートップの阪神・青柳(13勝)にも並ぶ。加えて147奪三振はすでにリーグ1位で、初のタイトル獲得は確実な情勢だ。

 まさにエース級の活躍を続けてきた戸郷の強みは、随所に表れるこうした強心臓ぶりだろう。振り返れば、今年6月にはこんな出来事も…。ジャイアンツ球場の室内練習場で打撃練習に取り組もうとした戸郷の前には、4学年上の先輩・高橋優貴投手(25)の姿があった。ちょうど高橋がマシン相手の打撃練習を終えたタイミングで、戸郷がケージ内で入れ替わるように放ったのがこのひと言だ。

「優貴、このまま(バットを)使っていい?」

 まさかの先輩を呼び捨て&〝タメ口〟だ。「相手が1学年でも上ならば生涯、先輩と後輩の関係が築かれるバリバリの体育会系」のプロ野球界にあっては異例とも言える関係性だ。

 確かに、戸郷と高橋は2018年のドラフトで入団した〝同期〟の間柄(高橋=1位、戸郷=6位)。普段の高橋自身がおっとりとした性格なことも多分に影響し、お互いの信頼関係があってこその構図だが、こうした物おじしない言動もプロの世界で名を上げられる一因だろう。

 攻撃陣の奮起ももちろん不可欠だが、戸郷に求められるのは結果のみ。断崖絶壁の一戦を前に「ポイントは先発投手か」と問われた原監督は「それはそうでしょう」と答えた。若き右腕が真価を発揮できるのか見ものだ。