ヤクルト・村上宗隆内野手(22)が13日の巨人戦(神宮)で今季55本目となる本塁打を放ち、1964年に王貞治(巨人)がマークした日本選手最多記録に肩を並べた。今後はバレンティン(ヤクルト)の持つ日本記録「60」、さらには令和初となる3冠王にも手が届きそうだが、すっかり「村神様」の呼称が定着した若き神スラッガーは、どこがすごいのか。本紙は動作解析の第一人者である筑波大・川村卓准教授(52)に徹底分析を依頼した。

 まず川村氏は「村上選手は打つとき、身体からバックスイングで一旦手を遠ざけ、バットをかなり身体から離している」と、村上の打撃フォームの特徴を指摘した。

「これの何がいいかって、離せば離すほど打つポイントとの距離ができるようになる。すなわちバットを加速させる距離が長くなる」

 ただ「遠くすると加速する反面、当たり前だがインコースが打ちにくくなる。けれど村上選手はインコースもうまく運んでしまう。何ができているかというと、来る球を瞬時に判断して一旦離したバットを身体に引き寄せられるんです。インコースの場合は距離の加速ではなく、身体を回転させたときの体幹の力で打つ。その難しい感覚を身体で覚えている」とコースによってスイングを使い分けできる高い技術力と柔軟性、瞬時の対応力のすごさを語った。

 さらに川村氏はあのレジェンドとも比較。「松井(秀喜)選手はその逆。身体に近いところからバットがそのまま出るので、アウトコースのボールに力が入りづらい。だから日本では逆方向に本塁打を打っていたが、メジャーではそれが難しくなった。対して村上選手はそこを操作できるので、メジャーの投手にも対応できる力があるということですね」と、スイングの面では巨人、ヤンキースなどで活躍した国民栄誉賞スラッガー・松井秀喜氏を超えているとした。

 しかし、そんな理想的な打撃フォームだと思われる村上にも、さらに上を目指せる余地があるという。

「たとえば大谷(翔平)選手と比べると村上選手は打つときに頭が動く。頭が動くと目線がブレる。速いボールを捉えるのには頭を動かさず、目線を定める。それが重要なんです。理想は頭を動かさないでこのままのスイング。どこを重点的に動かせばいいかというとお尻。大谷選手は頭の位置が動かない代わりに、お尻の位置は結構変わっている」と、ここからさらなる進化も可能と見ている。

 では村上の目指す〝究極形〟とは何か。メジャーでは13日現在(日本時間14日)、ア・リーグ年間本塁打記録「61」まであと4本に迫る57本塁打を放っているジャッジ(ヤンキース)が、大谷とMVP争いを繰り広げるなど注目を集めているが…。

「僕が村上選手と同じタイプで目指すべき選手だと思うのはパドレスのソトです」(川村氏)

 今季でメジャー5年目を迎えたソトは、長打力だけでなく率も残せるスラッガー。今年の球宴では本塁打競争で優勝を果たし、4月には球団最年少で通算100本塁打を記録した。20年にはナ・リーグ史上最年少で首位打者を獲得している。

「ソトは頭を動かさずに、村上選手と似たスイングで打っている。日本人がやるとかなり体力がいるし、意識してやらないと難しい。太ももの裏側などの普段使わない筋肉を使うので、なかなか維持するのは大変だから」

 ここの部分で進化を見込めそうなら、さらに対応できる幅が広がるという。

 また、将来のメジャー挑戦については「村上選手は今、低めの球を見極められるので全然振らない。しかしメジャーでは低めに落とす球や、下で変化する球がすごく多い。そこを攻略できるような対応が求められるでしょう。それを突き破ったのが大谷選手。村上選手が今後も日本で野球をするならこのままで十分。ただメジャーに行くのであれば、大谷選手のようなアジャストも必要になる」と続けた。

 日本ではもはや敵なしとも言える〝村神様〟が、これ以上進化してしまったら、どんなことになってしまうのか…。今季だけにとどまらず、楽しみはつきない。

☆かわむら・たかし 1970年5月13日生まれ、北海道江別市出身。小学校1年生から野球を始める。中学では軟式野球部でプレー。札幌開成高校進学後、3年夏に主将として甲子園出場。筑波大学、筑波大学大学院を経て96年浜頓別高校に教師として赴任。4年間野球部の監督を務める。2000年から筑波大学体育科学系講師として講義を行い、硬式野球部監督に就任。現在は准教授。選手の指導に携わる傍ら野球動作解析の研究を行う。