【多事蹴論(53)】日本代表で情報漏えいをしたのはまさかのキャプテンだった――。ジーコ監督率いる日本代表は2005年8月に韓国で東アジア選手権(現東アジアE―1選手権)に臨んだ。すでに06年ドイツW杯の出場権を獲得していたものの、ジーコ監督の場当たり的な采配に対するファンらの批判が高まっており、指揮官の真価が問われていた。

 同大会は国際サッカー連盟(FIFA)の定める国際Aマッチデーではないため、MF中田英寿ら欧州組を招集できなかった日本は初戦で北朝鮮に0―1と敗れると、指揮官は第2戦の中国戦に向けて先発メンバーを総入れ替え。サブ組で挑むという“奇策”も実らず、2―2と痛恨のドロー。1分け1敗として第3戦の韓国戦を迎えることになった。

 宿敵に敗れれば、最下位に転落する可能性もあり、W杯を前にジーコ監督の去就問題が再燃するのは必至。このためか、決戦前日の練習はただならぬ緊張感に包まれていた。練習後、指揮官はグラウンド隅にイレブンを集めて“青空ミーティング”を実施。韓国戦に向けた戦略を語ったとみられていた。

 取材するメディアが知りたいのは、追い詰められたジーコ監督がどんなメンバーで戦うのかということ。初戦、第2戦とまったく違うスタメンで臨んだことから第3戦の先発も注目された。ただイレブンは決戦前の取材攻勢にも慣れたもの。MF遠藤保仁は「メンバーはまだわからないですけど」。DF三都主アレサンドロも「それは言えません」と、当然ながら口は堅かった。

 そんな中、キャプテンのDF宮本恒靖は報道陣の質問を受けると「ミーティングの際、ジーコ監督の方から話があって次も同じメンバー(サブ組)で戦うって…」とポロリ。試合に臨むメンバーや戦い方は原則、チームの機密事項。本来ならばチームの要である主将こそが気を配らなければならないところだが“うっかり”で正直に話してしまった格好だ。

 その後、取材に応じたジーコ監督はメディアから「選手が次も同じメンバー(サブ組)で戦うと言っている」と質問されると、明らかに不服そうな表情。それでも「優勝の可能性もなくなったし、この前と同じメンバーで戦う。彼らがどのくらいプレーできるかを見てみたい」と眉間にシワを寄せながらコメント。試合も1―0で勝利し、最下位を免れた。

 ジーコ監督は基本的に「隠し事はしない」という方針で内部情報を漏らしてしまった宮本にも“おとがめ”はなかったが、軽率な発言だったのは否めない。大会後、ある代表選手は「ロッカーではツネさんが“取材で余計なことを言わないように注意しよう”っていつもみんなに声をかけているんですけどね。言っちゃいましたか」と話していたが、キャプテンとしての資質が問われる出来事だった。(敬称略)