【赤坂英一 赤ペン!!】球審が「ストライク!」とコールするや、打席の大谷翔平が苦笑しながら「違う、違う」と手を横に振る。「今のはボールだよ」と言わんばかりに。
そんな大谷の姿が特に目立つメジャーリーグで、ロブ・マンフレッド・コミッショナーが注目すべき発言を行った。2024年から、ボール、ストライクを機械が判定する〝ロボット球審〟、正式名称ABS(オートメイティッド・ボール・ストライク・システム)を導入するというのだ。
人間に代わって判定を行うのは、NPBでも使用されている計測器トラックマン。ネット裏に設置されたこの機械がストライク、ボールを判定して、人間の球審のイヤホンに伝達し、従来通り球審がコールする。
では、人間の球審は何を判定するかというと、第一にハーフスイング。第二に、機械はワンバウンド投球でもゾーン内に入ったらストライクと認識してしまうため、「ボール」と正しくジャッジし直す必要がある。
このABSは19~21年、MLBとパートナーシップ協定を結んでいる米独立リーグのアトランティック・リーグが試験的に導入。今年からマイナー3Aでも使用され、正確性向上に一定の成果をあげているという。
こうなるとメジャーの審判は厳しい立場に追い込まれそうだ。MLBはデータ専門の公式サイト「ベースボール・サーバント」であらゆる試合の統計データを公開。ツイッターには「アンパイア・スコアカード」というアカウントもあり、毎日全試合の球審のボール、ストライクの判定の正確率、裏を返せば「誤審率」がアップされている。
正確率95%以上なら優秀とされる一方で、85%以下はメジャーの審判失格と名指しでメディアに批判されたりする。そこへ24年以降、機械が人間をはるかに上回る正確率を示せば、人間の審判としては立場がない。
ABSは捕手のフレーミングにも大きな影響を及ぼすだろう。フレーミングとは、際どいコースに来た球をストライクに見せる捕手の高等技術。誰のストライク率がどれだけ高いのか、「ベースボール・サーバント」では細かくデータ化され、ランキング表まで載っている。この順位で年俸の額が左右されるとも言われてきたほどだ。が、機械が相手ではこういうテクニックも通用しない。
劇的に変化しそうな判定のシステムを、大谷はどんなふうに感じているのだろうか。いや、大谷ならただ黙々と対応するだけかもしれないが。
☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。












