日本陸連は17日、リオデジャネイロ五輪マラソン男女代表各3人を発表した。選考が注目された女子は、昨年の世界選手権7位入賞で内定していた伊藤舞(31=大塚製薬)に加え、福士加代子(33=ワコール)、田中智美(28=第一生命)が順当に選ばれるなど、全選手が理事会の満場一致で決定した。陸連幹部も安堵の表情を見せたが“福士騒動”の残した爪痕が新たな火種となってくすぶっている。

 会見にはロス五輪代表でジャーナリストの増田明美氏(52)も「お目付け役で来ました」と記者席にスタンバイ。陸連から6人の名前が発表され、選考に至った説明を聞くと「まさかの結果が出たらほえようと思っていましたけど、今回は文句なし!」と称賛し、抜きかけた刀をさやに収めた。

 これに陸連の尾県貢専務理事(56)も「今の時点では最高の選手選考の尺度だと思っている」とニンマリ。1月の大阪国際女子で優勝しながら「内定」が得られないとし、13日の名古屋ウィメンズに強行参戦の姿勢を示した福士の行動は、大きな波紋を広げた。批判の矢面に立たされただけに、安堵の心境だろう。

 ただ、すべてが丸く収まったわけではない。福士騒動では選考基準の脆弱性があぶり出され、多くの課題を残した。理事会でも、ある理事から「あそこで内定を下せるような選考を考えてもいいんじゃないですか?」との提案があったという。

 さらに、福士の行動により「本当に考えなきゃいけないテーマをもらった」と話したのは、世界選手権入賞で代表に決まった伊藤を指導する大塚製薬の河野匡女子監督(55)だ。

「簡単じゃないのは重々分かっている」と前置きした上で、男女とも4つの選考レースから、代表3人を選ぶ仕組みを疑問視し「分母と分子を合わせるのはマスト。3つにしないと、外された選手は説明がつかない。過去に一本(一発選考)でやったこともあった」と再検討を訴えた。

 騒動の過熱により、伊藤は世界選手権のタイム(2時間29分48秒)を一部で批判され、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子氏(43)が「伊藤さんはルールにのっとって選ばれている」と反論する展開となった。マラソンはコースや気温などに成績が大きく左右されるため、タイムだけでレースを比較するのは難しく、一本化の議論も再燃しそうだ。また、名古屋ウィメンズでは田中にわずか1秒差で敗れた小原怜(25=天満屋)が1万メートルでリオ五輪を目指す意向を明かしているように、選考レースが減れば、敗者も次のステップに進みやすくなるなどのメリットも指摘されている。

 一方、騒動の余波も広がっている。陸連は代表選手の合同合宿を計画しているが、女子は「練習は一緒にしないだろう」(関係者)と否定的な声が出ている。特に福士サイドと一部幹部の溝は深い。陸連は各選手の協力が得られない場合は「個人の方針を優先するしかない」(麻場一徳強化委員長=55)。2年前に新設したナショナルチームの成果が出ていないことも“団結”できない一因となっている。

 五輪に向けて一気にかじを切りたい陸連だが、福士騒動の功罪をキチンと検証する必要がありそうだ。