阪神・福留孝介外野手(43)が、来季のチーム構想から外れていることが21日に明らかになった。プロ22年目の今季は打撃不振により、出場試合が43試合と激減。打率1割5分4厘、1本塁打、12打点にとどまり、9月には新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者扱いとして一軍登録を抹消され、現在は二軍調整を続けている。当の本人は他球団へ移籍し、来季も現役続行の道を探っているというが――。

 来季の構想外が明らかになった福留はこの日、ウエスタン・オリックス戦に「5番・指名打者」で先発出場。4打数無安打に終わると、報道陣の問いかけにも無言を貫きバスへと乗り込んだ。

 阪神在籍8年目。球団への高い貢献度は誰もが認めている。2016年には日米通算2000安打を達成、17年から2シーズンは主将も務めた。卓越した打撃技術と理論で、親子ほど年の離れた若手からも「ドメさん」と慕われ、自らが培った経験を惜しみなく披露し、助言も送る。野球に真摯に取り組む姿は矢野燿大監督(51)以下、首脳陣からも「野球選手のお手本」と称され、先輩後輩を問わず尊敬を集める存在だった。

 それだけに「将来の監督」「打撃コーチ兼任」など幹部候補として報じられたが、実際には「そうではなかった」。こう打ち明けるのは編成人事に関わった経験を持ち、現在はすでに球団を退いたフロントの元OB幹部だ。

「ウチで監督になるには球団内での評価はもちろん(電鉄)本社のお墨付きも必要になる。将来監督をやるなら、なおさら。そういった本社決済も必要な会議で『いずれ福留に…』という話題に上がったことは一度もない」

 一方で昨季、引退勧告を拒否し退団した鳥谷(現ロッテ)や、今季限りでの現役を引退する藤川には岐路を迎えるシーズンの前々から「監督かどうか別に『指導者に…』とか、その手の話はあった」(同OB)というが、福留にはそもそも〝監督手形〟などなかったのだという。

 現在、指揮を執る矢野監督もプロ人生は中日からで一概に「生え抜き」「外様」の区別はできないが、一時代を築いた功労者と言えども「電鉄本社」すなわち会社の後ろ盾がなければ、阪神では生き残るのも簡単ではないというところだろう。

 一方で、福留自身は現役に強いこだわりを持っている。2~3年ほど前から馴染みの球界関係者から「一度、外から野球を見るのもいい機会では?」と水を向けられても指導者や評論家には一切、興味を示さなかったという。それだけ「まだ俺はやれる」という向上心も健在なのか。

 球界最年長の43歳からすれば、阪神での役目を終えるだけのこと。この日の「戦力外」の報は首脳陣やナインの多くが「本人からはまったく…」と驚くしかなかっただけに、誰もが再出発を願っている。