セ・リーグワースト記録となる開幕9連敗を喫するなど歴史的な出遅れを演じた矢野・阪神。先週末の巨人3連戦こそ勝ち越したものの、18日現在で勝率1割5分8厘の借金13と泥沼にあえいでいる。そんなダメ虎に、マット界きっての虎党として知られる越中詩郎(63)のフラストレーションも爆発寸前だ。「こんなに弱いのは初めて」と嘆く越中は“やるって節”で矢野燿大監督(53)と藤浪晋太郎投手(28)に必殺ヒップアタックをかます一方「まだ諦めていないって!」と元気のない虎ナインにサムライ魂を届けた。

少年時代、いつも1位だった巨人に立ち向かう阪神の姿に魅了されてファンになり、そこからは猛虎一筋。そんな越中にとって今季ほどイライラする年はない。「長年、阪神ファンをしているがこんなに弱いのは初めて。監督なり、上の人が辞めないとダメだって」とやり場のない怒りをぶつけた。

 キャンプイン前日に矢野監督が退任表明というまさかの展開で突入した今シーズン。この“フライング発言”が低迷の原因の一つと指摘する声は多いが、越中も同意見だ。

「監督がシーズン前にそういうことを言うのは良くない。チームの士気が下がってしまう。キャンプの映像を見てもニタニタしている場面が見られる。群れるのではなく、緊張感が大事。星野監督や落合監督は厳しかった。選手と監督間は仲いいだけではダメ。嫌われても厳しくあるべきだ」と矢野監督に苦言を呈した。

 指揮官に続いて越中が不満を募らせているのが藤浪だ。今季は青柳の代役とはいえ開幕投手を務めたが、新型コロナウイルス陽性と判定され離脱中。ここまで3度先発し0勝1敗、防御率6・00と10年目の今年も今のところ殻を破りそうな気配がない。

「大谷翔平とか同期が活躍している中で、燃えてくるものはないのか!? 俺もいずれはアメリカに行ってやってやるって!という気持ちが見えない」とバッサリ。さらに「上の世代には長州さん、藤波さん、下の世代には蝶野、武藤がいた。先輩たちの代を超えていかなければいけないし、下の代は自分を超えようとしてくる。みんな蹴落とそうとしてくる中で自分が上にいくという気持ちが大事」と迷える右腕に足りないものを指摘した。

「批判をしてくる人もいるが、ふてくされるだけ損。批判を吹っ飛ばすには練習しかない。新日本は巡業が終わった次の日でも練習している選手がいる。それが伝統であり、強さの秘訣だと思う。周りがすごいからって『お先にどうぞ』ではいけない。『ふざけんなって!』という気持ちが大事。誰よりも練習することが大事。そういう姿をお天道さまが見ているから」。期待しているからこその手厳しいエールだ。

 その一方で2年目の佐藤輝明内野手(23)にはワクワクしている。「阪神がこういう成績だから、はね返すしかない。まだ若いから彼の責任という人はいない。練習も大事だが、実践も積んでほしい。体はうそをつかない。体を鍛え上げていかないとプロの世界では生きていけない。だから一年中努力してほしい」と激励した。
 愛する阪神は出だしで派手に転倒したとはいえ、シーズンは始まったばかり。ナイン全員が「絶対成り上がってやる」という強い信念で立ち向かえば、巻き返しは十分可能だという。

 越中自身も逆境でこそ輝いてきたサムライだ。全日本プロレスでデビューし、後輩の三沢光晴とともにメキシコへ武者修行に出向いたが、師匠のジャイアント・馬場から三沢にだけ帰国令が届いた。異国に一人取り残されたことに危機感を抱き、全日プロを退団。ライバルの新日本プロレスに移籍した際には多くの非難を浴びたが、じっと耐え抜きいつしか新天地で花を咲かせた。1990年代には新日本隊からはじき出される格好で、平成維震軍として“独立”。だが、しょせんは多勢に無勢で苦闘の連続だったが、意地と執念で生き延びた。

「阪神の選手にも『いつか見てろよ!』という気持ちで練習に励んでほしい」と虎戦士の反骨精神に期待する越中は「この状況を打開するには流れを変えることが大事。今年はまだ諦めていないって!」と熱く訴えた。

 東京出身の越中は現在、長野県の景色や雰囲気が気に入り移住。山で基礎トレーニングを積み、試合がある1週間前に東京などに向かい調整を行っている。趣味は山梨の温泉めぐりとニンニク作り、そして何より勝ちどきを上げるタイガースを見ることだ。そんな虎党を喜ばせるためにも、猛虎は一刻も早く目を覚まさなければならない。