あの若鷹が気になっていたはずだ。ソフトバンク・王貞治球団会長兼特別チームアドバイザー(81)が宮崎春季キャンプの23日、二軍練習を視察。約1時間半に渡って、選手の動きを熱心にチェックした。
打撃練習中、最初に声をかけたのは育成出身の4年目・渡辺陸捕手(21)だった。渡辺と言えば、今キャンプで唯一、王会長に直接指導を仰いだ身長187センチ、体重89キロを誇る大型捕手だ。
キャンプ序盤に申し出を直々に受けると、今月10日に二軍練習に顔を出し、約1時間に渡って個別指導。渡辺は内角のさばき方などについて質問した。「あれだけ選手がいる中で、一番最初に自分から問いかけに来た選手。今年にかける気持ちというのが、そこに表れている。彼はバッティングがいい。肩もいい。できたら、もっともっと出場機会を増やして経験を積ませてやりたい。やっぱり長打力があるのは魅力。期待しています」と、継続的な指導に意欲を示していた。
所用で宮崎を一時離れていた間も気にかけていた。それはこの日の行動を見れば一目瞭然だった。小久保裕紀二軍監督(50)との会話中、渡辺の姿が視界に入るとスイッチオン。前日22日の対外試合での渡辺の結果を小久保二軍監督から伝え聞くと「なんだって!?」と思わず声を上げた。渡辺は1―1の9回無死満塁であえなく空振り三振。その前の打席でも二死満塁で一ゴロに倒れるなど、好機での一打を逃していた。
王会長はすぐさま渡辺に声をかけ、三振に倒れた打席のカウントを確認。「(2―2に追い込まれて)打ちたい、打ちたいとなってボール球を振ったんだろう?」と打席での心理と結末の過程を言い当てた。渡辺が「その通りです」と答えると、どうすればチャンスで打てる確率を上げられたかを丁寧にレクチャーした。「会長にはその状況に追い込まれるまでに勝負をつけられなかったのかを、相手バッテリーの心理も説明してもらいながらアドバイスいただきました」。
前日の試合後には「あの場面で打てないから僕は二軍にいるんです」と悔しさをあらわにしていた渡辺。「チャンスで打ちたい。打たないと上がれない」とヒントを求めていた若鷹にとっては、最高のタイミングで「王の言葉」が響いた。
特別チームアドバイザーとして〝現場復帰〟した王会長はこの日、グラウンドを離れる際にこう言っていた。「体も大きいし、バッテイングセンスもいい。やっぱり渡辺をモノにさせないといけない」。気概ある若鷹を一人前にしてみせる――という〝所信表明〟のようにも聞こえた。












