【2021プロ野球残念案件】シーズン中盤。ソフトバンクで思わぬお騒がせな〝事件〟が起きた。ヤクルトから移籍2年目を迎えたウラディミール・バレンティン外野手(37)のSNS騒動だ。

 ツイッターに周囲をザワつかせるつぶやきが連投されたのは8月5日の深夜のこと。

「スワローズ(の選手)として引退すべきですか?」(現在は削除済み)

「日本での最後のシーズンの時が来ました。神宮球場ですべてのファンの前で記念試合ができることを願います」

 振り返れば7月23日にも「すべてのことに終わりがある」と意味深ツイートをしていた。突然、勝手にラストイヤーを宣言した形となった。

 当然ながら波紋を呼んだ。バレンティンは2年総額推定10億円もの大型契約を結びながら、期待を裏切っていた。1年目は60試合の出場で打率1割6分8厘、9本塁打、22打点。2年目も打率1割8分2厘、4本塁打、9打点に低迷。当時は二軍調整中だった。何よりも鷹ファンを落胆させたのは、最後まで古巣への「スワローズ愛」を漂わせたことだっただろう。

 リーグが変わって打てなくなるリスクは多くささやかれていた。とはいえ、ここまでの不振は想定外。ヤクルトでは在籍9年のうち8シーズンで30本塁打超え。移籍前年の2019年も打率2割8分、33本塁打、93打点の好成績をマークしていた。まさか二軍暮らしが続き、お騒がせツイートで話題になるとは…。

 なぜ、こうなってしまったのか。バレンティンが漏らしていたというのが「リスペクトがない」との言葉だった。2013年にNPB新記録となる前人未到の60本塁打をマーク。言うまでもなく球界の大記録保持者だ。バレンティンからすれば、ヤクルトと同じように、レジェンドとしての心地よい扱いをしてほしかった。もともと気分屋なところがある選手。2年目も一軍の試合にもっと出られればとの自負があった。

 一方のソフトバンク球団からすれば、そもそも「十分にリスペクトをしている」との思いがあった。首脳陣も我慢して起用した。しかし、成績を残してもらわなければ、使い続けるわけにもいかない。どんな選手に対しても球団では一軍保証、出場保証はしておらず、打ってくれさえすれば解決する問題と言わざるをえなかった。

 性格的に子どもっぽいところがあったとしても、決して悪い人間ではない。あえてバレンティンの肩を持てば〝コロナ禍〟の影響も大きかった。移籍直後の新天地1年目のキャンプでは、目を輝かせて猛ハッスルしていた。

 ヤクルト時代は自分のペースで調整していたはず。そう考えればシーズン前に飛ばし過ぎているように見えたものの、オープン戦の成績は10試合で打率3割5分、2本塁打、10打点(OPS1.264)と本領発揮。開幕が本来の日時で始まっていればスタートダッシュを切めて、違った形となっていたかもしれない。

 それがコロナの影響で日程は何度もズレ込んだ。バレンティン自身も1年目は「シーズンに入る体の作り方が難しかった」と結論付けている。ハイペース仕上げから調子が落ちた状態でシーズンに入り、いいところを見せようと焦って結果を求めてドツボにはまった。気持ちの面でムラのある大砲は負のスパイラルに陥り抜け出せなかった。足を痛めて走塁面でも精彩を欠いた。

 2年目は再入国の手続きの問題で来日が大幅に遅れて二軍スタート。特別扱いなしにより厳しく結果を求められた。初手から復活は厳しそうな状況下だった。ようやく一軍に昇格しても打ちたい気持ちが強く出過ぎて力み倒した。

 家族の来日がかなわず単身赴任の日々もマイナスに働いた。下の子はまだ2歳。バレンティンの〝SNS騒動〟の第1弾となった「幸せはお金では買えない」(2020年9月末にインスタグラムに投稿)は、家族に会えない寂しさを投稿したものだった。もっとも、投稿の際、輝かしいシーズンを送ったヤクルトでの打席に立つ写真を使っていたため、深層心理では古巣への思いもあったのかもしれないが…。

 もちろん、コロナの影響は、どの選手も条件は一緒と言われればそれまでになる。結果的には、ヤクルトからの退団が決定的となった際、その性格を知る古巣関係者から「うちじゃなくて大丈夫なの?」と心配されていた通りとなってしまった。

 日本を離れる前に「年俸は気にしない。できればもう1年、日本でプレーするチャンスがほしい」。こう現役続行を希望したバレンティン。現時点で他球団との契約は決まっていない。稀代のスラッガーが再び日本球界でホームランをかっ飛ばす姿は見られるのか。