1975年6月に公開された映画「ジョーズ」は世界的ヒットとなり、日本でも大ブームを呼んだ。このブームの“犠牲”になった悲しきマスクマンがいる。“白覆面の魔王”ことザ・デストロイヤーの「覆面世界一決定戦」第9戦(76年2月21日、後楽園)の相手に選ばれた“青い鮫”ことブルー・シャークだ。
9戦目にもなると覆面不足となりジャイアント馬場は「NWAとPWFに連絡を取り実力のあるマスクマンを探していた。覆面世界一を決めるのだから下手な相手はぶつけられない。全米各地のプロモーターにも連絡を取り、ブルー・シャークに落ち着いた」と説明した。
魔王は「知らないな。俺がアメリカを出てきた後に台頭してきたんだろう」としながらも、黒覆面の写真を数分間見つめると「うーん…この目はどこかで会ったことがある。南部ジョージアで活躍してるって? あいつかもしれん。だとすると大変だ。強い男だ。俺よりひと回り大きい。昔、戦ったこともあるあいつだとすれば俺もタイツのひもを締めなおさなければ…」と意味深な言葉を吐いている。
ここで疑問が生じてくる。記事は単なる黒覆面なのだが、なぜ“青い鮫”なのか? ブルー・シャークの正体を把握しているような魔王の言葉は何を意味するのか? 答えは当日に明らかになる。
来日したシャークは宣材写真とは大違いのブルーの覆面男。まさに「ジョーズ」が大きく口を開けた中にもう一枚マスクがあり、異様な風貌だ。本紙は「“青い鮫”ブルー・シャークはその名の通り全身青ずくめで、鮫の凶暴さを白で歯が染め抜かれている、ゴングと同時にいきなりデストロイヤーに鮫の“牙”を立てた」と試合を報じている。
どう見ても流行に便乗した急造感満載だが、実力は本物で1本目をニードロップで先取。最終的に2―1で魔王が快勝した。
結局、シャークはこれが最後の来日となるのだが、後日にすべてが明らかになる。来日直後、全日本のスタッフから「このコスチュームで試合をしてほしい」と要請されたという事実が発覚したのだ。魔王が正体を見抜いていたように、覆面の中身は第2回ワールド大リーグ戦にも出場したダン・ミラー。6度の来日を誇り、アジアタッグも獲得した実力者だった。マスクマンが不足したため、急造変身を強いられた“被害者”でもあった。(敬称略)













