やっぱりタダ者ではない――。女子ゴルフの渋野日向子(23=サントリー)が、プロゴルファーの間でも評価を上げている。米女子ツアーの来季出場権をかけた「最終予選会」第1週(アラバマ州モービル・マグノリアグローブ)は独特の重圧をはねのけて通算6アンダーの24位で突破。プロをもうならせる勝負強さは、最終関門となる第2週(9~12日、同州マーシュウッド・ハイランドオークスGC)でも発揮されそうだ。

 2019年の海外メジャー「AIG全英女子オープン」優勝で得た米ツアーメンバーになる権利を放棄し、渋野は満を持して今回の最終予選会に臨んだ。初日は81位と大きく出遅れ、2日目も72位で第2週に進出できる70位圏外。しかし、3日目に66の猛チャージで位に急浮上すると、4日目も69でまとめて、残る4日間に駒を進めた。

 渋野は〝前半戦〟を「1日目、2日目とつまずいて、ハラハラドキドキな4日間だった」と振り返った。ファンも同じように〝ハラハラドキドキな4日間〟と感じていただろうが、プロゴルファーの目にはどう見えたのか。あるベテラン男子プロは、渋野の戦いぶりをこう評価した。

「全てうまくいくに越したことはないが、どんな選手でもそうはいかない。ダメだったホール、ラウンド、そして大会の後、引きずらないことが大事になってくる。プロでもその切り替えが、うまくできない選手が結構いるのだけど、渋野さんは出遅れから、ある程度の位置まで上がってきたのは素晴らしい。プロ仲間でも、そういう話をしたよ」

 かねてバウンスバックが代名詞になっていたように、渋野の取り返す力には定評がある。今回もそれをやっただけとの見方もできそうだが、最終予選会ならではの意味があるという。通常のツアーに比べて、来季の〝職場〟を求める者で争う予選会はピリピリムードが漂う。選手にのしかかるプレッシャーも高まるのが一般的で、前出のプロも「落ちたら終わりの予選会の立て直しは、より難しいと思う」と指摘した。

 見事だった3日目の猛チャージだけでなく、4日目も4番まで2つ伸ばした直後にダボをたたいてズルズルいきそうな流れから巻き返しに成功。国内ツアーで2勝を挙げ、復活を印象付けた今年後半の戦いで、メンタル面の切り替え力と技術的な修正力に磨きがかかり、重圧の中でも発揮されたのだろう。

 もちろん、渋野にとっては残る4日間をクリアしなければ意味がない。持てる能力を出し尽くして、ツアーフル参戦の目安とされる20位以内に入りたいところだ。