新たな〝使命〟とは――。北京五輪フィギュアスケート男子4位の羽生結弦(27=ANA)が14日の会見で今後も競技を続ける意向を示した。今大会は3連覇を逃し、前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦も成功には至らなかった。それでも、現役続行へ前向きな姿勢を見せた羽生にはフィギュア界の「改革者」としての役割も期待されている。
羽生は日本代表の赤いジャージー姿で会見場に登場。300人以上の報道陣が詰めかけた中、冒頭で「質問の前に僕の方から…」と切り出すと、金メダルを獲得した盟友ネーサン・チェン(米国)をはじめファン、関係者への感謝の思いを伝えた。
フリー(10日)の前日練習では右足首を痛めて「普通の試合だったら完全に棄権していた」と明かした。転倒した4回転半について「自分の中で誇れるアクセル」と納得し、五輪への気持ちを「ケガしても立ち上がって挑戦するべき舞台。また滑ってみたい」と表現した。注目が集まっていた進退については「これからも羽生結弦として、羽生結弦が大好きなフィギュアスケートを大切にしながら極めていけたらいいなと思っています」と口にし、現役続行の意向を示した。
スケーターとして今後も氷上に立てば、再び大きな重圧を背負うだろう。羽生は「五輪を2連覇した人間として胸を張って」と前を見据えるが、競技と並行してフィギュア界の「採点改革」に期待する声もある。早大在学中にフィギュア採点の「AI化」に取り組んだのは有名な話。「フィギュアスケートにおけるモーションキャプチャ技術の活用と将来展望」と題された卒業論文では自らの手首やヒジなどの関節にセンサーをつけてジャンプの感覚を数値化した研究を発表した。
現役トップスケーターによる論文はフィギュア界に大きな影響を与え、論文が完成した2020年末に国際スケート連盟(ISU)は財務報告書の中で「ISUは専門家と協議しながら、選手のパフォーマンスを評価し、可能な限り公正で公平な判断を下すためにAIの可能性を評価している」と表明している。
羽生とともに約2年間、研究をともにした早大人間科学部の西村昭治教授は現在も取り組みを継続。「技術的な問題はだいぶクリアされ、アルゴリズムもブラッシュアップできている。3~4分間の演技をAIで分析するにはまだ数時間かかりますが、費用をかけて速いコンピューターを使えばリアルタイムで計算できる」。すでに某日本企業がAI採点システムの構築に乗り出しているが、羽生の研究内容が採点改革の一翼を担う可能性は十分にある。
今大会はスノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢(TOKIOインカラミ)が自身の不可解採点に「スルーしないほうがいい」と声を上げた。フィギュア界でも採点問題がたびたび持ち上がっており、絶大な影響力を持つ羽生が〝旗振り役〟となれば「改革」が前進することは間違いない。
西村教授は「彼はそういう立場だと思う」と話した上で「(実用化の)見通しが見えてきている。羽生さん、そして日本スケート連盟の協力を得て、ぜひ一緒にやってみたい」と期待した。
五輪を連覇し、国民栄誉賞も受賞してフィギュア界をけん引してきた氷上のプリンスはまた一つ、大きな使命を担った。











