フィギュアスケートのアイスショーは、競技と異なりエンターテイメント要素の強いイベントだ。出演スケーターに注目が集まる一方で、裏方も夢を追いかけている。ダンサー、演出家、脚本家など幅広い分野で活躍する三井聡氏(42)もその一人。スケーターへの振り付けを通して抱いた〝目標〟とは――。

 転機は19歳のころだった。日本大学芸術学部演劇学科演技コース入学後にジャズダンスと出合い、ダンサーへの道を歩み出した。ブロードウェイミュージカル「Trip of Love」など多くの舞台を経験。演出家としては歌手・大黒摩季のコンサートツアーの演出や宝塚歌劇団の外部演出などにも携わった。

 約10年前からは振付師のキャリアもスタートさせた。2015年~17年、23年にはアイスショー「プリンスアイスワールド(PIW)」でグループナンバーを担当。「振付師の仕事をすることは想像していなかった」と振り返るも、一度熱が入るととことんのめり込んだ。

 当時の「PIW」は過渡期。新たな風を吹かせる役割を任された三井氏は、氷上ならではの表現術に苦戦した。「単純に滑りながら演技をするので、簡単に止まれないところから大変だった」。ただ、未知の世界に足を踏み入れた面白さも感じていた。「スケートとダンスと舞台カルチャーが混ざることで化学反応が起きていた」。スケートの経験がないダンサーが振り付けをするのは異例だったが、異色のコラボが現在の「PIW」の盛況ぶりにつながった。

 近年はグループナンバーだけでなく、スケーター個人の振り付けも行っている。8月のアイスショー「フレンズオンアイス」では、女子で五輪2大会連続出場の鈴木明子さんの「Where I Wanna Be」をつくり上げた。三井氏は「面白い振り付けをつくるのも大事だけど、手の動かし方や首、顔をどこに置くかなど、基本の部分を意識している」と、ダンスで培った技術を惜しみなく伝授。同じ表現者の視点から、ジャズ基調の作品を生み出した。

 スケートならではの表現を突き詰める中で、三井氏にある思いが芽生えるようになった。「いつかアイスショーを演出したい」。スケーター、ダンサーら多くの表現者と出会ってきたからこそ、頭に自然とアイデアが浮かんだ。「スケーターはもちろん、俳優や歌手の方も呼んで、ミュージカルのようなことができたら。コンサートは総合芸術で歌があって、ダンサーがいて、音楽もある。そこにスケートも入って、超総合エンターテインメントみたいなものをつくれたら面白いのでは」と声を大にした。

 さまざまな表現者が出会うことで、交わることのなかった世界が融合。「そのジャンルを知らなかった観客に、その魅力を届けることができる。新しいジャンルに触れることで今まで知らなかった芸術と出合う人たちが増えてくれたら」と力説した。三井氏自身もスケートを通じ、想像のしていなかった世界が広がった。コラボレーションの可能性を知る表現者は、人々に〝体験〟という力を伝えていく。