最近、ロシアのウクライナ侵攻の可能性を伝えるニュースが多いが、日本国内ではどこか遠い国の話扱いだ。2022年の現代にあって、武力での現状変更はあり得ないと思う人もいるだろう。しかし、ロシアのプーチン大統領ウオッチャーでもある軍事評論家の黒井文太郎氏は「たった今、ウクライナ侵攻が始まってもおかしくない」と、緊迫する状況を解説する。

各国がロシアのウクライナ侵攻を想定して、現地から自国民を退避させようとする状況が続いている。

 米国務省は14日、同国首都キエフにある米大使館の機能を西部リビウに一時移転すると発表。ロシア軍の部隊増強が「劇的に加速している」とし、予防的措置を取るとしている。

 在ウクライナ米大使館を巡っては、国務省が12日、米国人職員に国外退避を命令。英国なども大使館職員らの退避を決めたり、促している。

 武力による領土拡大という現代にあるまじき行為が本当に起こり得るのか? 軍事評論家の黒井文太郎氏がプーチン氏の性格を読み解いてこう明かす。

「プーチン氏は何か行動を起こす時に必ず自己正当化できる事実を作るが、今回、ロシアは安全保障の観点からウクライナのNATO加盟に反対して拒否された身。すでに安全保障を脅かされているという自己正当化のカードを持っている。これまでのプーチン氏の言動や性格から何の軍事行動も起こさないとは考えにくく、ウクライナ侵攻を実行する可能性は高い」

 プーチン氏のウクライナに対する執着は強い。昨夏には「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表。ロシア語とウクライナ語で書かれた論文は、もともと両国民は一つの民族だったとし、暗に「ウクライナはロシアの領土」と主張している。

 2014年にはウクライナの一部であるクリミア半島を実際に武力侵攻。実効支配して武力による現状変更が可能であることを世界中に見せつけた過去がある。

 さらに欧米によるロシアへの制裁が手ぬるいことも拍車をかけそうだ。欧米ともにロシアがウクライナへ侵攻しても軍事介入はせず、経済制裁にとどめると明言。その経済制裁も欧州への天然ガスパイプラインを止めるという欧州にとってはもろ刃の剣で、そう長くは続けられないと見られている。また、ドイツに至っては、ロシアの侵攻に備えて、ウクライナにヘルメットを送るという冗談のような対応だ。

 黒井氏は「圧倒的軍事力を持つロシアにとって“邪魔者”がいない、かつ経済制裁も怖くないとなれば、ウクライナ侵攻は短期間のうちに完了するだろう」と分析する。

 ただし、いきなりロシアとウクライナの全面戦争にはならない可能性が高そうだ。

「プーチン氏の頭の中には、それこそ数千通りの戦略が描かれているはずです。ただ、いきなりウクライナの首都キエフを空爆すれば、多くの国に悲惨な状況が配信され、批判を受けることになるのでやりづらい。だから、ロシア系住民が多い東部で自作自演テロなどを起こして口実を作り、まずは東部の局地戦。そこから戦線拡大でウクライナ全土へ広げる可能性がある」

 まず局地戦から始めることで、国際世論の批判を巧みにかわすというわけだ。

 一部では「北京五輪中の侵攻はない」という見方があるが、黒井氏は「すべてはプーチン氏の心一つ。たった今、ウクライナ侵攻が始まってもおかしくない」。米国政府は日本政府に対して欧州への天然ガスの緊急融通を要請したが、これも有事になれば天然ガスが不足する欧州に向けての“助け舟”といわれる。周辺状況からも、その瞬間は近いと言えそうだ。