新型コロナウイルスの感染拡大によりサッカー界へのダメージが広がっている。アジアサッカー連盟(AFC)は同ウイルスの発生源とされる中国のクラブが絡むアジアチャンピオンズリーグ(ACL)1次リーグ第3節までの試合延期を決定した。今後はACLにとどまらず、各大会に影響が及ぶことは必至とみられるが、欧州クラブ所属の日本代表イレブンにも火の粉が降りかかる恐れが出てきた。

 日本勢では第3節に予定されていた3月3日の神戸―広州恒大戦(御崎公園)が5月26日に、3月4日のFC東京―上海申花戦(東京)と横浜M―上海上港戦(横浜国際)が5月27日にそれぞれ延期された。

 感染拡大に伴って、ACLに3クラブが出場するオーストラリアが中国に滞在した外国人の入国を拒否するなど、大会へのさらなる影響が避けられない事態に陥っていた。ついにアジア最高峰の舞台であるACLの日程変更を強いられる事態となったわけだが、まだまだ騒動は広がりそうだ。

 実は“中国の英雄”を巡って水面下ではこんな動きも起きている。「エスパニョール(スペイン)は3月の代表戦にFW武磊(28)を中国国内に行かせたくないようで招集の見送りやアウェー戦だけ招集するなど、様々な選択肢を協会側と調整しているという話もある」とJ1クラブ関係者は指摘する。

 今季はエスパニョールの主力に定着して活躍中の武は中国屈指のスター選手で、3月には同国代表としてカタールW杯アジア2次予選に臨む予定。問題は同26日にホームでモルディブ戦を控え、その直前に中国の国内合宿が予定されていることだ。中国は新型コロナウイルスの発生地で国内で感染者が急増している状況のため、クラブ側は代表活動への参加に難色を示している。

 この背景には欧州で蔓延するアジア系差別がある。欧州では中国人だけでなく、アジア人全体に対して“保菌者扱い”する差別的行動が広がっている。こうした偏見は2003年に大流行したSARSの時にも起きており、日本代表OBも「クラブ側の事情もあるし、選手としても行きたくない思いもあるだろう」と複雑な状況を推察する。

 感染とともにこうしたアジア人への偏見まで拡大すれば、欧州クラブに所属する日本人選手にも影響が出かねない。特にビッグクラブはファンの声に敏感なだけに、MF南野拓実(25)の所属するイングランド・プレミアリーグの名門リバプール、スペイン1部マジョルカにレンタル移籍したMF久保建英(18)の本所属となる強豪レアル・マドリードが、3月の日本代表招集を拒否する可能性も考えられる。

 悪化の一途をたどる新型コロナウイルスの影響が東アジア地域全体にも及ぶ中で、森保ジャパンは3月決戦にベストメンバーを招集できるだろうか。