逆境を機に生まれ変わることができるか。全日本プロレスの前3冠ヘビー級王者・宮原健斗(31)が、大幅な路線変更をもくろんでいる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2連覇がかかった春の祭典「チャンピオン・カーニバル(CC)」が史上初の中止に。それでもこの空白期間を前向きにとらえ、新たなステージへと突き進む。

 CCの中止を受け、29日の千葉・木更津市民会館大会までの15大会が消滅した。これにより現時点で正式に決まっている4月の試合は、6日に無観客で行われる東京・新木場1stRING大会のみとなった。

 宮原は「僕はエンターテイナーだから、ファンの皆さんに100%楽しめる状況で試合を見てほしい。だから、判断として正しいと思います」と団体の決断を受け止めるや「試合減で調整が難しいかって? 問題ありませんよ。(健介オフィス時代の)若いころは月に数試合なんてザラでしたから。慣れてます」とさらりと口にした。

 ただし、レスラーとしての目標を失ったのも事実だ。3月23日に諏訪魔に敗れ、最多連続防衛記録タイの「V10」を達成した3冠王座を手放したばかり。春の祭典を再起の足掛かりにするつもりだったからだ。

 だが「もう前を向いてます。こうなった以上、自分から動いて現状を打破する方法を見つけるしかない。そう思っていろいろ考えたら、気づいたんですよ。僕は完成しすぎていたってことに…」とナルシシズム全開で語り始めると、「かっこよく入場して、いい試合をして、最後はマイクで『最高ですか!』と叫ぶパッケージが出来上がって、固まっていたんです。完成しすぎて進化するのは難しいほどに。だからあえて、この完成した宮原健斗を壊して、新たな宮原健斗をつくらないと進化できないと思うんです」と続けた。

 そのために、新たな宮原健斗像を模索するという。ファイトスタイルの変更や新技の開発はもちろん、ユニット「ブードゥー・マーダーズ(VM)」に所属した経験も生かし、極悪戦士になることさえ視野に入れている。「見た目から変えるのが僕らしい気もしますよね。例えば一から出直す意味で、丸坊主にショートタイツでダッシュで入場するとか。マスクをかぶってリングネームを『ケン・T』にするとか、うーん…」と仰天の変身計画を明かしつつ考え込み、そのまま一切の問いかけに応じなくなった。

 時にあり余る時間は人をおかしな方向に導く。老舗団体のエースが迷走しないことを祈るばかりだ。