新日本プロレス真夏の祭典「G1クライマックス」は13日、東京・両国国技館で優勝決定戦が行われ、Aブロック1位の内藤哲也(35)がBブロック1位のケニー・オメガ(33)を撃破して4年ぶり2度目の制覇を達成した。初優勝の2013年大会後には苦悩の日々を送ったが、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(LIJ)結成後に大ブレークを果たし、名実ともに新日本の頂点に立った。内藤は本紙に独占手記を寄せ、復活Vの裏舞台と秘めた思いを明かした。 

 まずはG1クライマックス27を応援してくれた全国のお客様に「グラシアス、アミーゴス!」。開幕戦翌日の空港に向かう特急列車の中で、たまたま俺と同じスーツケースを使っていたおばあちゃんが間違えてコスチューム一式を持って行ってしまった時はさすがに焦ったけど、終わってみれば優勝という当然の…でも最高の結果を得られて、今は充実した気持ちでいっぱいです。

 今年の開幕前に「G1とはこれ以上ないジャンプ台」と言いました。4年前の夏、俺はこのジャンプ台を踏み損ねてしまった。お客様を納得させられず「新日本プロレスの主役」として認めてもらえない拒絶反応が起きた。それはものすごい早さで日本中に広まり、どこの会場に行ってもブーイングとヤジを受ける日々が続きました。大好きだったプロレスが、どんどん憂うつになってしまった時期です。

 そんな光景に、俺以上に落ち込んでいたのは母親(京子さん=58)だったのかもしれません。デビュー戦はもちろん、都内での大会は頻繁に観戦しに来てくれていた母親は、このころから会場に来なくなってしまった。俺は息子として、一人のレスラーとして情けない気持ちでいっぱいで、理由を聞くことさえできませんでした。

 個人的な話になって申し訳ないけど、今年のG1で一番うれしかったのは、そんな母親が久しぶりに会場に来たいと言ってくれたことです。予定を聞いて、8月11日の両国大会に招待しました。俺自身がプレイガイドでチケットを買ってね(笑い)。大会後は「久しぶりに燃えたよ!」ってメールをくれましたよ。2015年にLIJを結成してから、多くの人たちの「手のひら返し」を見てきたけど、まさか身内の「手のひら返し」にここまで待たされるとはね…。でも今回の優勝を一番喜んでくれてるのも、母親なんだろうなと思います。

 俺が中学校3年生の時に立てた目標の一つに「東京ドームのメーンイベントに立つ」という項目があります。G1覇者として迎えた14年ドーム大会は、ファン投票によりIWGPヘビー級選手権はセミに降格してしまった。ブーイングを浴びていた当時の俺に、その夢をかなえる資格がなかったんでしょう。

 今は胸を張って言えます。新日本プロレスの主役は俺だ、とね。今回の優勝で、俺はまたIWGPの挑戦権利証を手にするんでしょうけど、これはドームのメーンに立つ資格を保証するものではない。それを決めるのは、お客様の声ですよ。だからこそ今の熱をもっと大きなものにしなければならないと思ってます。

 LIJで自信を取り戻してから、俺は常に「やってる人間が楽しまなきゃ、見てる人間は絶対に楽しくない」という言葉を頭に入れるようにしてます。でも同時に「見てる人間の気持ちを忘れてはいけない」ということも肝に銘じてます。東スポの取材場所をファミレスに指定し続けているのも、ただ好きだからって理由だけじゃないからね。俺はファン時代、会場で観戦するたびにファミレスで仲間とプロレス談議に花を咲かせてた。あの時の気持ちを忘れたくないっていう思いが、ちゃんとあるんですよ。

 今度こそちゃんとジャンプ台を踏んだ俺が、これからどこまで高いところへたどり着けるのか。期待を裏切るつもりはないですよ。だけどその答えはもちろん…トランキーロ! 焦んなよ!