初代タイガーマスク率いるストロングスタイルプロレスが2日に会見を行い、新間寿会長(86)が突然の勇退宣言を繰り出した。

 この日の会見では9日新宿フェイス大会の対戦カードが発表された。だがコメントを求められた新間会長がマイクを握ると場の空気は一変した。新間会長の心境に変化をもたらしたのは11月27日にNHK・BSプレミアムで放送されたアントニオ猪木氏(78)の闘病生活を密着したドキュメンタリー番組だった。

「私は長生きをし過ぎたと思っております。そろそろこの世界から遠く離れるべきだと思いに駆られまして、その最中に猪木さんのBSの放送を見ました。なつかしさ、喜びと、そして本当にすごい人生を送ったなという思いがあります。私は今日を限りに、プロレスには携わるというのではなく、傍観者としてこれからの人生を生きていきたい」

 猪木とモハメド・アリによる世紀の一戦を実現させるなど一時代を築いた〝過激な仕掛け人〟が、病と戦う猪木の姿を見て自身の引き際を悟ったという格好だ。「いま残っている平井丈雅に後を託しながら、来年はどういうプロレスになっているのかと、私は傍観するような状況になってしまった寂しさと、そして良かったなという思いを、タイガーと藤波に先日話しました。プロレス界を見守り、これからも応援していきたいと思います」と明かした。

 これを受けて初代虎は「10年前、後楽園の売店で暴漢者に襲われた平井丈雅ですが、新間さんの言われる傍観者は我々の期待している本当の傍観者。いつまでも本当の傍観者になってカツを入れていただきたい」と今後も〝後見人〟としての役割を期待。「新間さんがテクニックを教えてくれるか、そうではない。プロレスの魂を作ってきた。その魂を我々は出していかなければならない。いまプロレス界はそういう状況ではない。それをやらない限りプロレスの復活はありません。新間の功績は魂であるということを伝えたい。新間さんのマネは誰もできません」と感謝の言葉を口にした。

 一方で平井代表は突然の展開に困惑の表情を浮かべるばかり。慰留も含め今後団体として正式な対応を検討していくという。