業界盟主の対抗軸となるか。サイバーエージェント傘下のノアとDDTに飲食事業会社DDTフーズを加えた3社が9月1日付で経営統合し、プロレス事業子会社「株式会社CyberFight(サイバーファイト)」として始動する。明確に「対新日本プロレス」を打ち出した高木三四郎社長(50)は本紙に、描く近未来図を披露した。

 DDTは2017年9月にサイバーエージェント傘下となり、今年2月にはノアもグループ入りした。今後、経営統合により誕生する「サイバーファイト」の社長は現在両団体の社長を務める高木が就き、副社長にはノアの丸藤正道(40)とDDTの彰人(33)が就任する。

 きっかけは、マット界を襲った新型コロナウイルス禍による収入減だ。高木社長は統合によるコスト削減などのメリットを説明した上で「DDTの下にノアがつくことはないし、その逆もしかり」と団体ブランドの維持を強調。「東京ドーム大会の開催を目指す。目標はプロレス界ナンバーワン。新日本プロレスさんを追い抜きたい」と言葉に力を込めた。

 現状では新日本だけが開催する東京ドーム大会だが、同社長は実現化のプランを持つ。「いろんな視野がある。今のソーシャルディスタンスを取る状況のままなら、逆にどこか単体でも満員にできるんじゃないかとか。でも僕はドーム大会といえば『日米レスリングサミット』が印象に残っている。WWF(現WWE)と全日本と新日本が合同でやった、あれはインパクトがありました。ああいうのも面白いかと思う」

 3団体のスターが集結した1990年4月13日のオールスター興行を引き合いに出し、その再現を目指すという。DDTにはかつて所属したケニー・オメガ(36)が副社長を務める米「AEW」との太いパイプがあり、ノア、DDT、AEWによる合同興行であれば十分可能性はある。

 また、新日本超えの目標については「勝負する場所は売り上げだと思っている。単体だと差がついていますが、3社を足せばそこそこ肉薄できる。射程圏なのは間違いない」と分析し「1つが独占してるのって面白くない。停滞しちゃうし。もっともっと面白くしたい」と自信をのぞかせた。

 そのためにも今後は“社内バトル”を激化させる。「各団体で競争意識が一層芽生えると思う。そこで切磋琢磨できれば。なれ合いは嫌なので、例えばビッグマッチを同じ会場で続けるとか、リーグ戦を近い日程でやるとかであおりたい」。ノアの「N―1 VICTORY」、DDTの「D王グランプリ」とそれぞれのシングルリーグ戦をほぼ同時期で開催することも視野に入れる。

 コロナ禍が生んだサイバーファイトが、マット界に新たなうねりを生み出すのは確か。今後の成り行きに注目が集まりそうだ。