【赤坂英一 赤ペン!!特別編】シーズン最多本塁打の日本新記録にばく進中のヤクルト・村上宗隆、もはや更新自体というより、何本上積みできるかが興味の焦点である。残り20試合で野村克也元監督の52本に並んでいるから、今後は2試合に1本打てば、ヤクルトの先輩4番バレンティンの60本を超えられる計算だ。
村上にとって一番幸いなことには、王貞治・現ソフトバンク球団会長の55本を超えさせまいとする〝圧力〟が、現代の球界にはない。2001年には近鉄・ローズ、02年には西武・カブレラが55本を打ち、日本新記録を目指して王監督率いるダイエー戦に臨んだが、いずれも徹底的に勝負を避けられて四球と凡打の山を築かされている。
王監督が「勝負するなと指示してはいない」とコメントした一方、あるコーチは「指示されなくても歩かせるのは当然のこと」と発言。つまり、首脳陣が王監督の胸中を忖度したがゆえの〝日本記録防衛措置〟だった。
しかし、13年にバレンティンが60本を打って〝王超え〟を果たすと、そんな古き悪しき慣習もようやく消滅。今回は村上が日本人で、巨人・松井秀喜と同じ背番号55をつけていることもあって、球界全体が記録更新に歓迎ムードだ。
2日の中日戦で、村上は史上最年少の22歳で松井と並ぶ50号を記録。「(松井と)同じ背番号をもらった時から目標にしていました」という発言も好感度を高めた。
そうした中、気になるのがヤクルトの残り22試合の対戦相手の出方である。とくに6試合を残すDeNA、各5試合の阪神、広島はいずれもCS進出がかかっているだけに、僅差の展開で、走者がいる場面で村上を迎えたら、真っ向勝負を避けてもおかしくない。
実際、広島は8月25日、神宮のファンのブーイングをものともせず、村上を2打席連続で申告敬遠しているほど。あるカープOBもこう言う。
「ヤクルト戦残り5試合のうち、2試合は広島の本拠地マツダスタジアムじゃ。CS進出が見えてくれば、当然大入り満員になる。佐々岡監督には就任3年目で初、チームにとっても4年ぶりのAクラスがかかる試合なんじゃけ、村上との勝負を避けても地元のファンは支持してくれるじゃろ」
ヤクルト戦をホームで2試合残しているのはDeNAも同じ。8月下旬の3連戦では、村上に4本塁打を含む9安打9打点とボコボコにされた。正直、新記録のアーチは見たいが、相手チームにも意地を見せてほしい。
☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。












