【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】さわかみ関西独立リーグの兵庫ブレイバーズに所属する久保康友投手(41=ロッテ、阪神、DeNA、海外独立リーグなど)が北海道ベースボールリーグの富良野にレンタル移籍することが、4日に球団から発表された。

 これは久保自身の発案で実現。来週からのチームの北海道遠征に帯同し、そのまま2週間ほどプレーする予定だ。「投げる冒険家」の異名を取る右腕は「これは日本プロ野球界初のレンタル移籍になりますね」と、北の大地でのプレーを心待ちにしているという。

 プロサッカー界では当たり前となっているレンタル移籍。NPBでも過去に何度も話題となったが、実現されないまま現在に至る。2005年、近鉄消滅に伴い楽天が新設された際には戦力差が明らかで、積極議論されたこともあったが、日本球界ではいまだに実現へのハードルが高いということだろう。

 6月には日本ハムのビッグボスこと新庄剛志監督が、プロ野球活性化の一案としてレンタル移籍を提唱したこともあった。自軍のエースの名を挙げ「上沢くんと菅野くん(巨人)が代わってね。何勝かずつしたら戻る、みたいな。めちゃくちゃ面白いと思う。プロ野球を盛り上げるためにね」と話した。ただ、実現の可能性は低い。

 そんな中、3日には「現役ドラフト」が今オフから実現する見通しがプロ野球選手会の森忠仁事務局長から言及された。NPBとの事務折衝後の会見で「今年、始められるのは間違いないかなと思います」と発言。出場機会に恵まれない選手の移籍が活性化する動きが出てきた。

 そこで、久保康友のレンタル移籍の話に戻る。独立リーグでのレンタル移籍成立が、球界全体に大きく影響することはないだろう。そんなことは本人たちが最も分かっているはずだ。ただ、それでもプロ野球人として野球界に話題を提供するマインドがあることに意義があると考える。

 兵庫ブレイバーズ・川崎大介球団代表は「我々のリーグの選手は無給。久保選手も例外ではない。それでもチームのため、野球界の発展のために最大限の協力をしてくれている。今回のレンタル移籍も久保選手が申し出てくれました」と感謝している。

 世界最高峰のMLBで大谷翔平が大活躍しているが、それだけが野球ではない。独立リーグ、社会人野球、学生野球、高校野球、草野球も先人たちがつないできた野球文化だ。そこを支えるのは野球を楽しんでくれるファンに他ならない。「現役ドラフト」も形骸化させることなく、ファンがワクワクするような話題提供を期待したい。

 ☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。