球宴の主役はバットだった? MVP柳田や清宮に受け継がれた大打者の思想

2022年08月02日 11時30分

球宴第2戦で本塁打を放ってMVPに輝いた柳田(東スポWeb)
球宴第2戦で本塁打を放ってMVPに輝いた柳田(東スポWeb)

【赤坂英一 赤ペン!!】ある意味、今年の球宴の主役はバットだった、と言えるかもしれない。

 第1戦では日本ハム・清宮がサヨナラ本塁打を放ち、見事MVPに選ばれた。すると、第2戦では清宮の兄貴分、ソフトバンク・柳田がそのサヨナラ弾のバットを借り、勝ち越し本塁打を打ってMVPを獲得している。

 柳田が「清宮選手が素晴らしいバットを使っておられる」とお立ち台でおどけたら、ファンにも選手にも大ウケだった。

 この“MVPバット”は、アディダス社が清宮のために作った球宴仕様の限定品とされる。清宮はシーズン中、長さ86~87センチ、重さ900グラム前後のモデルを使用。一方、柳田のアンダーアーマー社製も、長さはほとんど変わらない。ただ、首位打者とトリプルスリーを獲得した2015年には870グラムと、軽めのものを使っていたという。

 そこで思い出されるのが現役随一のホームランバッター、西武・中村のバットにまつわる逸話である。08年、初の本塁打王(46本)を獲得できた要因の一つが、実は先輩の後藤(現楽天育成総合兼打撃コーチ)のバットに変えたことだった。

 当時、私の取材に中村はこう答えてくれた。

「たまたま、後藤さんのバットを振ってみると、驚くほどしっくりと手になじむんですよ。自分のバットより20グラム重い920グラム。重心の位置も先っぽに近くて、ヘッドが利くなあ、と思った」

 中村は後藤のバットを1本もらうと、契約しているSSKに渡し、まったく同じタイプのものを作るように注文。以後、プロアマ合同の規格変更でヘッドを細くせざるを得なくなった12年まで、中村はずっと後藤モデルを使い続けたのである。

 その中村以上によく他の選手のバットを借りていたのがヤクルト・内川。ソフトバンク時代の11年、シーズンは首位打者(打率3割3分8厘)とMVPを獲得して絶好調だったが、日本シリーズではどうも打撃の調子が思わしくない。そこで、「今宮のバットを借りて打ちました」と、こんな話をしてくれたものだ。

「シリーズで打った7本(のヒット)のうち、3本を今宮のバットで打ちました。僕はもともと3種類から5種類のバットを使ってるんです。大抵の選手はバットを1種類に決めてますけど、同じバットでもしっくりくる日とこない日とがある。そんな時、まあいいや、と同じバットを使っちゃいけないと思います」

 そうした大打者の思想が今、柳田や清宮に受け継がれているようだ。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。

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