正捕手の誕生はいつ…。巨人は9日の西武戦(ベルーナ)に4―3で逃げ切って勝ち、連敗を3で止めた。チームの有事でプロ初スタメンマスクに抜てきされたのは、高卒3年目の山瀬慎之助捕手(21)だった。新たな戦力が上々のデビューを飾った一方、正捕手の育成構想は道なかばで中断。レギュラー筆頭格の大城卓三捕手(29)は今季も殻を破れずにいる。

 主役の座をさらったのは主将・坂本だった。右ヒザのじん帯損傷から40日ぶりに戦列復帰し、3回に先制適時打を放つなどいきなりの3安打猛打賞。チームは12残塁を喫しながら13安打で押し切った。

 前夜からドタバタだった。先発予定だった菅野が発熱し、この日「特例2022」に基づいて登録抹消。二軍戦で先発予定だった赤星がエースの代役を務め、山瀬にも一軍デビューが舞い込んだ。山瀬は赤星が降板する5回までリードして1失点。4回の第2打席では左前へプロ初安打もマークし「初スタメンの日にチームが勝利して、初安打も打てたのでメチャメチャうれしいです」と満面の笑みだった。

 若武者が大きな一歩を踏み出したことは喜ばしい半面「正捕手構想」は中断中だ。首脳陣が求めているのは捕手陣の中で屈指の打力を誇り、守備力も向上してきた大城の〝脱皮〟だ。出場機会こそ年々増やしてきたが、大城の課題に挙げていたのは年間を通じて先発マスクをかぶれないスタミナ不足。過去にも夏場に体重が激減して攻守で精彩を欠いたことも…。原監督が「体力がないなあ」とボヤいたことも一度や二度ではなかった。

 そこで立ち上がったのが、元最強捕手の阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチ(43)。大城は5月に入って打率が2割2分台まで急降下した。それでも、これまでの壁を越えさせようと我慢の起用にこだわった。象徴的だったのは5月20日の阪神戦(甲子園)。今季最長5時間3分の消耗戦で延長12回までフル出場させ、翌21日のデーゲームでも試合終了までマスクをかぶらせた。5月下旬の試合前には、2時間以上も付きっきりで打撃指導に当たる熱の入れようだった。

 これには指揮官も「(大城の)コンディションが下がらないように」と忠告しつつ「一本立ちさせようと慎之助が一生懸命やっている。『(ベンチに)もう引っ込めるか? 休ませるか?』と言っても『いや、行かせてください』と。たいしたもんだなって。(大城が)毎年この階段を上れないのを慎之助は分かっているから」と舌を巻くばかりだった。しかし、大城の打棒は上向かず、今月2日に登録抹消。5年目で不振を理由とする初の二軍落ちだった。

 この日の試合後、原監督は山瀬を引き合いに「いい風を吹かせたと思いますよ。立派だった。小林にしても岸田にしても大城もそう。何か奮起に。いろいろな意味で何かの材料になると思いますよ」とあおった。大城も抹消から1週間がたったこの日から二軍戦に出場。扇の要を奪い返せるのか、それともこのまま小林や後輩に奪われてしまうのか――。