「虎の仕事人」の役割は今年も多岐にわたりそうだ。阪神・糸原健斗内野手(29)が、26日のオープン戦・中日戦(北谷)で初の対外試合に臨む。

 今キャンプでは3日に新型コロナ陽性判定のため、一時期チームを離脱も12日に再合流後は精力的な動きで、24日の紅白戦で実戦復帰。右翼席へ本塁打を放ち、1日野手キャプテンを務めた25日の声出しでは、井上ヘッドコーチの現役時の応援歌を流し〝上司イジリ〟で笑いをとり、チームの盛り上げ役としてもひと肌脱ぐなど「存在感」もバッチリだ。

 もちろん、本業でも打線に欠かせない存在となる。昨季は主に正二塁手、スタメン121試合のうち、64試合で2番打者というクリーンアップへの〝つなぎ役〟が主戦場だった。逆にシーズン後半は5番打者以降、佐藤輝や大山、マルテなどの中軸勢のすぐ後ろを打つ機会が先発で45試合。実はこの〝大砲の後ろの糸原〟は複数の他球団からもっとも嫌がられる位置でもあった。

 矢野監督の打順起用について、セの関係者はこう分析する。「前を打つ長打率の高い打者が、よりストライクゾーンで勝負をする確率を高めるためでしょう。糸原は追い込まれた後に、粘る力はリーグでも指折りのレベル。走者がいたらいたで、進塁打の小細工もできる。阪神のクリーンアップは大山も、佐藤輝も、早いカウントから勝負する打者が多い。敵からすると、うまくいけばその回を少ない球数で終えられる可能性も、糸原がいることによって、そのリスクがなくなる。3球で2アウトで迎えた打席なんてときは必ず(球数を)投げさせてこようとしますから」と長打率は高くなくとも、厄介な存在という。

 常に長打の期待を担う中軸勢も、長いシーズンでは好不調の波はある。そんなときこそ場の空気に応じて、自軍へと流れを呼び込むことができる「大砲の後ろに構える糸原」は打線の〝守り神〟的存在となっている。