【赤坂英一 赤ペン!!】広島で近い将来、小園海斗内野手(21)、林晃汰内野手(20)、中村奨成捕手(22)の〝U23クリーンアップ〟が実現するかもしれない。主砲・鈴木誠外野手(26)がすでにメジャー移籍希望を公言していることから、想像以上のスピードで打線の世代交代が進みそうだ。

 とくに際立っているのが、3年目・林の急成長ぶりだ。新型コロナ禍で主力8人が戦線離脱した5月18日、今季初めて一軍昇格すると「7番・三塁」で先発出場して先制タイムリー。交流戦ではスタメン14試合で打率3割3分9厘をマークした。

 リーグ戦再開後も勢いは衰えず、19日のDeNA戦ではプロ初の4打数4安打に4打点1本塁打の大活躍。逆方向の左翼席に突き刺した弾道は、テレビ解説の槙原寛己氏をして、リーグトップ21本塁打を打つ「ヤクルト・村上宗隆のようです」と言わしめた。

 林本人もヒーローインタビューで本塁打を振り返り「やってやろうと思いました」とキッパリ。21日時点で、打率4割8厘、得点圏打率は6割4分7厘に達している。

 小園が1位指名された2018年ドラフトで、林は智弁和歌山から3位で入団。高2夏、高3春夏と3季連続甲子園に出場しており、この3大会は私も取材した。が、実を言えば、林はまるで印象に残っていない。

 2年夏は右ヒジのケガに泣き、根尾昂内野手(現中日)、藤原恭大外野手(現ロッテ)らを擁する大阪桐蔭に2回戦で惜敗。その後にヒジの手術を受け、捲土重来を期した3年春は決勝で根尾に抑え込まれて、夏は早々に初戦敗退だ。

 しかし、智弁和歌山の甲子園最多勝監督、高嶋仁監督は「林の逆方向へ打つ力は今まで見た選手で一番」と絶賛。プロのスカウトも同じ点を高く評価し「素質なら筒香嘉智(現ドジャース)クラス」という声もあった。当時の私はもっぱら大阪桐蔭に注目していたが、林を見ている人はしっかりと見ていたのである。

 そんな林の大ブレークに、小園や中村奨が刺激を受けないわけがない。とくに林や小園より1年先輩、4年目の中村奨の危機感は相当なものだと聞く。奇しくも、林が4安打したのと同じ18日には、代打でプロ初本塁打を放っている。

 それでも、周囲の関係者には「僕は去年まで何もやってないですから」と話すなど、ホッとしている気配は微塵もない。

 そう言えば、林たちの先輩・坂倉将吾捕手も23歳。それでいて、二軍首脳陣に「昔の前田智徳と同じぐらい熱心に練習する」と言われている。〝U23クリーンアップ〟誕生の日は本当に近そうだ。

☆=あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。