落合監督が「V逸なら丸刈り」の公約を実行 潔い行動に選手も発奮

2020年05月20日 11時00分

08年にガンダムプラモデル生産工場を訪れ、ビームライフルを手にご満悦の落合監督

【球界平成裏面史(27) 2007年落合中日VS原巨人の巻】平成19年(2007年)10月4日、本拠地最終戦に臨もうとしていた中日ナインは落合監督の姿を見て言葉を失った。何と坊主頭となってナゴヤドームに現れたからだ。

 この2日前に原巨人がリーグ優勝を決め、中日はV逸。実は落合監督はシーズン開幕の日に長男の福嗣さんと「優勝できなかったら丸坊主になる」と約束しており、3日の高校生ドラフトを終えた後、近所の理髪店に出向いてみそぎの断髪式(9ミリまでバッサリとカット)を行ったのだった。

「何があっても親子の約束は破ったらいかん。勝ちゃあ、この頭にする必要はなかった。髪の毛は伸びてくるが今年のシーズンは戻ってこないんだよ」。こう語ったオレ流指揮官だが、うれしかったのが理髪店に同行した福嗣さんからの申し出だった。「父ちゃん、オレも一緒に丸坊主になるよ」と親子揃って丸刈りに。落合監督は断髪から3日後に放送が開始されたアニメ「機動戦士ガンダム00(ダブルオー)」に引っ掛けて「2人とも丸坊主でゼロみたい。おっ、2人でダブルオーだな」と笑っていたという。

 実は落合監督はアニメ「ガンダム」シリーズの大ファン。ガンダムといえば多くの人はアムロやシャアが登場する「機動戦士ガンダム」(1979年)を思い浮かべるはずだが、そこは普通とは違うオレ流だ。ガンダムにはまったきっかけはファンの間でも評価が分かれるマイナーな作品「機動新世紀ガンダムX」(96年)であった。さらに「機動戦士ガンダムSEED」(02年)、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(04年)などのテレビシリーズだけでなく「0080ポケットの中の戦争」「0083STARDUST MEMORY」「第08MS小隊」といったガンダムのオリジナルビデオアニメ作品も全てチェック。そんな中でも「機動戦士ガンダム00」は落合ファミリーを最も熱くさせた作品であった。

 ガンダム00が放送された07年から09年にかけて福嗣さんが明かしてくれた落合監督のガンダム愛エピソードは枚挙にいとまがない。当時の落合監督の携帯電話の着信音はL’Arc~en~Cielが歌うガンダム00の主題歌「DAYBREAK’S BELL」。福嗣さんがガンダム00の放送日にドラゴンズを応援するため球場に行こうとすると「お前は来なくていい。お前にはガンダムを録画するという重要な任務がある。ガンダムが録画できなかったらどうするんだ」とストップをかけていた。

 落合家では一時、ガンダム00のキャラクターのセリフを使って会話をすることが流行。落合監督は愛車・アストンマーチンのエンジンを掛ける際には「トランザム!」と発声し(注・トランザムとは「ガンダム00」に登場するモビルスーツのスペックを大幅に向上させるシステムのこと)、信子夫人から「買い物に行ってきてね」と頼まれると「望むところだと言わせてもらおう」と主人公のライバル役であるグラハム・エーカーのセリフをまねして答えていたという。

 閑話休題、落合監督のガンダムエピソードはこのへんにして話を元に戻そう。指揮官が丸刈りになったことでビビったのが2位で終わった中日の選手たちだ。何といってもあのオレ流が頭を丸めたのである。「あの頭を見て申し訳ない気持ちになりました。連覇を逃して相当悔しかったんでしょうね」「これでクライマックスシリーズも敗退したらボクらも(丸刈りに)なるぐらいの気持ちで必死でやらないといけない」とチーム内にはピリッとした空気が一気に充満。そのままCS第1ステージに突入すると3位・阪神を連勝で下し、第2ステージではリーグチャンピオンの巨人にあっさり3連勝したのだった。

 原巨人をコテンパンにして日本シリーズ進出を決めた落合監督は東京ドームから都内の自宅に戻ると家族3人でマツタケご飯を食べてお祝い。録画してあった「機動戦士ガンダム00」の第3話「変わる世界」を見ながら満足そうにこうつぶやいたという。「あー、勝った後のガンダムは最高だな」――。