ロッテのドラフト1位ルーキー・佐々木朗希投手(18=大船渡)をめぐり、空前絶後の大フィーバーが巻き起こっている。11日の新人合同自主トレ初日には、1000人以上のファンが本拠地・ZOZOマリンスタジアムに集結。練習後には急きょサイン会が行われたが、舞台裏では想定外の“朗希フィーバー”に対応するため、様々な策が講じられていた。

 例年、オフは閑散とするマリンの敷地内に、長蛇の列が尾を伸ばした。1000人以上が列を成した先頭には、ペンを握った“令和の怪物”。40分間の制限時間いっぱい、約250人にサインをした佐々木朗は、やや疲れを見せながらもファンとの初めての交流を楽しんだ。

 ファンサービスをとるか、トラブルの回避か、まさにギリギリの選択だった。大フィーバーの到来に備え、新人合同自主トレを異例のZOZOマリンスタジアム開催に決めた当初から、スタンドにファンを入れるかどうかは大きな議題のひとつだった。ここ数年、注目ルーキーの周辺でサインがらみのトラブルが起きていたことがその理由だ。

 一昨年には当時ルーキーだった日本ハム・清宮のサインを目当てに、一部ファンが千葉・鎌ケ谷の二軍施設で“暴徒化”。練習後も夜遅くまで居座って選手や球団関係者に暴言を浴びせ、のちに警察が出動する事態にまで発展した。つい先日もヤクルト・奥川恭伸投手(18=星稜)のサインを求めて一部のファンが戸田球場でトラブルを起こしており、球団内には警戒を強める向きもあった。

 過激なファンへの対処としてサイン会の事前告知は一切なし。当日の状況を見て臨機応変に開催の判断を下した。レフトスタンド下に設けたサインブースから、ホームランラグーンを通りライトスタンド、さらに球場外へ列を整理。さらに並んでいる間に「サイン会は(午後)4時までとなります。今列に並んでいてもサインをもらえない可能性があります」と繰り返しアナウンスすることで騒動を未然に防いだ。悪質な行為に対抗するための策として編み出したのが、この日の“ゲリラサイン会”だったというわけだ。

 球団スタッフの陰の尽力により、無事にサイン会を終えた佐々木朗は「ボールに書くのは難しかったけど、ユニホームは意外と書けた。僕がもっと書くのがうまければ、たくさん書けたんですけど…。ファンが近くにいたので応援されていることを実感しましたし、応援の言葉でいっそう頑張らないといけないなと思いました」と気持ちも新たにした。

 午前9時からの座学に始まりプロとして初のファンサービスまで、長い一日を終えた佐々木朗は「たくさんのことがあって疲れました。練習を見られることは今までなかったので緊張感があった。しっかりやれることをやった」と充実の表情。自主トレ期間中のテーマについては「体力面だったり体の強さはやっぱりまだまだ弱い。体力強化だったり、体の強さを高められればいいです」と目標を掲げた。

 プロ野球人生の門出を球団の計らいと多くのファンの祝福で飾り、いよいよ“令和の怪物”が始動した。