米大リーグ機構(MLB)と選手会は24日(日本時間25日)もフロリダ州ジュピターで新労使協定の合意に向けて4日連続の交渉を行ったが、進展はなかった。MLBは23日(同24日)に28日(同3月1日)までに成立しなかった場合、レギュラーシーズンを短縮する方針を通告しており、最悪の事態が現実味を帯びてきた。シーズンが15日以上短縮された場合、エンゼルスの大谷翔平投手(27)のFA権取得が2024年オフにずれ込み、米メディアが予想する超大型契約が幻になりかねない。

 労使の対立が泥沼化している。選手会は24日に数項目の修正案を提示したものの、合意には至らなかった。米スポーツサイト、アスレチックのエバン・ドレリッチ記者は自身のツイッターで「選手会はサービスタイム(メジャー登録日数)操作とアマチュアドラフトの提案を行った。新提案(の内容)は、サービスタイムが与えられる選手の人数を減らし、ドラフトは(下位)7球団による抽選式はそのままだが、連続下位となった球団にはペナルティーを科す要素を加えることに変更」と速報した。主要争点の年俸総額や選手の最低年俸は話し合われなかった模様だ。

 MLBはすでに「2月28日までに合意に至らなかった場合、レギュラーシーズンの試合がキャンセルされる。期限は期限だ」と合意までのデッドラインを通告。このまま平行線が続く限り、レギュラーシーズン短縮は避けられない。AP通信はシーズンが15日間以上短縮された場合、「大谷のFA権取得が23年オフから24年オフに1年遅れる可能性がある」と報じた。

 メジャーでは25人の出場選手枠に172日登録されると1年とカウントされ、計6年でFA取得となる。18年にメジャーデビューした大谷は4年に達している。順調なら23年のシーズン終了後にFA権となる計算だ。今季のシーズンは3月31日に開幕して10月2日(同3日)までの186日。ロックアウトで15日間短縮になると171日となり、1年分とカウントされる172日をクリアできないのだ。日程を変更したり、ダブルヘッダーを組むことができれば消化できるが、MLBは「試合のリスケジュールはされない」と否定。FA取得は24年オフにずれ込む。

 今季以降の成績も影響するだろうが、サイ・ヤング賞と本塁打王の同時獲得も可能な投打二刀流はメジャーでも唯一無二の存在。29歳で迎える23年オフに大争奪戦が繰り広げられることは必至で今季550万ドル(約6億3525万円)の年俸がどこまで上がるか注目されている。

 米スポーツ専門局ESPNは昨年8月に早々とメジャー史上最高の5000万ドル(約57億7500万円)での5年契約の可能性を予測。ワシントン・ポスト紙は昨季、投手で9勝、打者で46本塁打、100打点と活躍し、ア・リーグMVPに満票で輝いた大谷の年俸5800万ドル(約67億円)に相当すると算出、総額4億ドル(約462億円)を超えると予想する報道もあり、青天井の様相だった。

 しかし、24年に30歳でFAとなった場合、事情が変わる。最近のメジャーでは30歳を超えた選手との長期契約を避ける傾向がある上に、投打二刀流で体への負担が懸念されることから年俸総額が減ることは避けられない。もちろん、23年まで保有権を持つエンゼルスが、FA取得を待たずに長期契約をオファーする可能性もあるが、条件がつり上がる争奪戦ではないため、結果的に“大損”となる見込みだ。

 MLBが通告したデッドラインの28日まで残り4日間。それまでの合意を期待するしかない。