米の分業化社会に変化もたらす大谷 二刀流への批判や異論は皆無

2021年06月28日 14時00分

チームメートに迎えられる大谷(ロイター=USA TODAY Sports)
チームメートに迎えられる大谷(ロイター=USA TODAY Sports)

【広瀬真徳 球界こぼれ話】もはや異次元としか言いようがない。エンゼルス・大谷翔平(26)の躍進が止まらない。今季、チームが“リアル二刀流”を解禁した直後は周囲から「シーズンを通して体が持つのか」という不安の声が散見された。しかし、今ではそんな雑音もどこへやら。15日(日本時間16日)からの6試合で「6発+1勝」という離れ業をやってのけたかと思えば、17日には自身のインスタグラムで球宴前日に行われる「ホームランダービー」(本塁打競争=同7月12日)への出場も公表した。

 球宴本戦出場の可能性も考慮すれば、誰がどう見ても蓄積疲労や故障への不安が募る。それでも本人は挑戦し続けるのだから頭が下がる思いだ。日米だけでなく、世界中の野球ファンが二刀流に魅了されるのも当然だろう。

 そんな想像を絶する活躍ぶりだからなのか、米球界に長年浸透する「分業化」の概念も変化の兆しを見せているという。メジャーは日本に比べ、選手個々の役割分担が明確である。例えば投手であれば先発は「6回または100球」を目安に救援投手陣にその後を託すことがほとんど。余力があってもマウンドを譲る背景には中4日で回る先発ローテーションも影響しているが、救援投手の仕事場を奪わない意味合いもある。代打や代走、守備固めなど野手にも各自特有の持ち場があり、このような共存社会では本来、大谷のようにマルチな才能を持つ選手は「他選手の職域を奪いかねない存在」と見られても不思議ではない。ましてや大谷は米国では「外国人」。日本人による異国での新たな試みは、それだけで奇異な目で見られがちである。

 ところが、現在の米球界で二刀流に対する批判や異論は皆無に等しい。それどころか「一人二役」を平然とこなす超人を熱心に応援する雰囲気まである。所属するエンゼルスがチーム全体で支援し続けていることもあるだろうが、それを差し引いても分業を推奨する米国、メジャー社会で日本人選手の二刀流がこれほど普通に受け入れられていることに驚きを隠せない。これは本人の普段の振る舞いや努力に加え、野球に対する真摯な姿勢、何よりケガを乗り越え渡米4年目のシーズン序盤から投打で結果を残し続けているたまものだろう。その意味で大谷の日々の躍動には尊敬の念すら抱いてしまう。

 文化や思考が異なる地で受け入れられ着々と道を切り開く26歳。無限の可能性を秘める挑戦はどこまで続くのか。 

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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