大阪府警が公務執行妨害容疑で逮捕した男が、1971年の渋谷暴動事件の殺人容疑などで指名手配された過激派「中核派」の活動家・大坂正明容疑者(67)とみられる件は、母親らとのDNA型照合で、血縁関係があるとみて矛盾がないとの鑑定結果が出たことが23日に分かった。中核派の組織的支援を受けたとみられる逃亡生活は約46年にも及ぶ。半世紀近い時間を経ての逮捕劇をどうみるか。元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏が推察した。

 大坂容疑者とみられる男は18日、大阪府警が別の事件で非公然活動家・鈴木哲也容疑者(52)の逮捕状を取り、中核派がアジトとして使っていた広島市安佐南区のマンションの一室を家宅捜索した際、鈴木容疑者とともに同室に滞在。捜査員に体当たりをしたため、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。取り調べに対し、2人とも黙秘を続けているという。

 男は家宅捜索時、風呂場付近で水溶性の書類を処分しようとしており、府警は中核派の活動資料を証拠隠滅しようとしたとみて調べている。

 中核派は過激派の極左集団。「革命的共産主義者同盟全国委員会」が正式名で、東京都江戸川区の出版社「前進社」が本拠地。警察庁によると、構成員は渋谷暴動事件の71年に約8370人で、現在は約4700人。暴力での共産革命を目指し、内部にテロやゲリラを実行する非公然組織「革命軍」などがある組織だ。渋谷暴動事件では、沖縄返還協定の批准阻止闘争で学生らが渋谷で派出所などを襲撃し、警察官1人が死亡した。

 男が逮捕されたことについて北芝氏は「大坂は支援者も多い。(日本赤軍元最高幹部の)重信房子(服役中)のように外国に行っていると、日本人は絞られるので、おとり捜査で日本の支援者がどの程度いるかあぶり出せる。国内の逃亡だとそれも難しかった。ただ、日本中にポスターがあって有名なのに、45年(半)もよく捕まらなかったと思う」と述べた。

 半世紀近い逃亡に、捜査員の間では「内ゲバも多いので、殺されてるんじゃないか」ともささやかれていたという。それでも、「警官殺しということで警察も執念を燃やしていた。大坂も容貌が変わり、油断もあったかもしれないが、警察の執念が実った」と捜査を評価した。

 逃亡には中核派の組織的支援があったとみられる。「支援者には過激派出身の実業家が多く、中核派は革マル派(極左過激組織)より資産が多いといわれている。今は薄れていますが、かつては出版業界にも強い影響力を及ぼしていた。ビルやアジトが全国に複数あり、転々としていたのだろう」(北芝氏)

 だが、「それも昨今の出版不況で打撃を受け、昔の腐れ縁に泣き付かれて助けてあげていたのができなくなった。最後は大坂も、手厚いかくまいをされていなかったのではないか」と支援態勢の弱体化を指摘した。

 くしくもこの日、衆院本会議で「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決された。

 共謀罪については問題点も指摘されており、賛否の分かれるところではあるが、中核派はモロに対象となる存在だ。

 共謀罪法案の衆院通過と中核派の容疑者逮捕のタイミングが重なったことに北芝氏は、「大坂はたびたび居所を変えているし、このタイミングに合わせてパクれるわけでもない。警察は警察で淡々と警官殺しを追っていたわけで、そういう意図はないだろう。そもそも、仕事が増えて面倒だから、共謀罪をどうでもいいと思っている警察官もいるくらいですよ」と語る。

 それでも、共謀罪法案の審議が進んでいることは“革命家”へのけん制になったかもしれない。「中核派だけでなく、革労協も革マルも狙われるだろうから戦々恐々だろう。捜査側にとっては最高のタイミングだし、追われる側にとっては最悪のタイミングだろう」と北芝氏はみている。