世界一の美酒に酔いしれた男たちが、最後に手にしたのは葉巻だけではなかった。球団史上初のワールドシリーズ制覇を果たしたブルワーズに、まさかの〝愛煙家軍団〟の顔が浮かび上がった。勝利の陰にあったのは、試合前から紙巻きタバコをくゆらす異色の験担ぎだった。

 米紙「ニューヨーク・ポスト」は30日(日本時間31日)、ブルワーズの奇妙な喫煙習慣を特集。通常、メジャーの祝勝シーンといえばシャンパンやビールを浴び、葉巻に火をつける光景がおなじみだ。ところが、今季のミルウォーキー軍団にとって紙巻きタバコは、優勝を祝うだけの小道具ではなかった。

 発端は試合前の打撃練習。選手たちは打撃ケージ付近でタバコに火をつけ、重要な一戦に向けて気分を高めていたという。その名も「ラリー・ヒーターズ」。英語で速球を意味する「ヒーター」に掛け、ケージで〝ヒーター〟を吸えば、試合では〝ヒーター〟を打ち砕けるという、何とも豪快な験担ぎだ。

 主将のクリスチャン・イエリッチは米スポーツ専門局「ESPN」に「ケージのそばを通ってタバコに火がついているのを見ると、みんな準備万端だと思うんだ」と明かしている。決して喫煙が打撃力を高めるわけではない。それでも選手同士の気持ちを一つにする〝勝利の儀式〟にはなっていたようだ。

 実際、今季のブルワーズはメジャー最多の103勝59敗を残し、ポストシーズンも11勝2敗。リーグ優勝決定シリーズではドジャースを4連勝で粉砕し、ワールドシリーズではレイズを4勝1敗で退けた。速球に対するシリーズ打率は2割7分8厘。レイズの1割5分9厘を大きく上回った。

 歓喜の第5戦終了後も、その習慣は続いた。シャンパンやビールが飛び交う祝勝会を経て、次のパーティーへ向かうバスの中で、ジェイク・バウアーズ、サル・フレリック、ブランドン・ウッドラフがそろってタバコに火をつけたという。

 MLBでは2016年の労使協定で、翌年以降にデビューした選手のグラウンド上での無煙タバコ使用を禁止。喫煙を取り巻く風向きが厳しくなる中、時代に逆行するような珍習慣だ。もっとも、世界一をたぐり寄せたのは煙の魔力ではなく、グラウンドで積み重ねた実力。勝利の余韻を味わう一服は、豪快な男たちの〝優勝の味〟となった。