希少な野生動物が生息するモンゴル東部ドルノド県のヌムルグ自然保護区で今月8日、大規模な草原火災が発生した。東京都の約2・4倍に当たる約5288平方キロに火災が及び、保護区の約8割が被災する大惨事となった。KDDI子会社の活動に伴い火災が発生したとされ、モンゴル政府が損害賠償請求を検討。モンゴルメディア「アイコン」などが報じた。
火災は、日本のKDDIの子会社である現地通信大手「モビコム」の幹部らが乗った車両から発生したとみられる。車体下部に絡まった枯れ草を除去するため停車した際に発煙し、周囲の草に燃え移ったという。
火災は8日間燃え続け、16日に鎮火。火災現場は中国と国境を接しており、野生動物が中国側へ逃げたとの情報もあり、当局が生態系への被害を調査している。
モビコムは23日、声明で「自然環境に取り返しのつかない被害を与えた」とモンゴル国民に謝罪。原因究明への協力と責任を果たす姿勢を示した。親会社のKDDIも謝罪し、自然環境の早期回復に取り組む方針を表明した。
一方、モンゴル政府は火災の責任者を特定した上で、モビコム側への損害賠償請求を検討している。被害額は焼失した草原だけでなく、森林、土壌、希少な野生動物などへの影響も含めて算定する方針で、巨額の賠償問題に発展する可能性がある。
そもそも、なぜモビコムの幹部らが希少動物の楽園に足を踏み入れたのか。
モンゴルメディア「エグール」は当初、モビコム幹部らが希少な巨大淡水魚「アムールイトウ(タイメン)」を釣るために保護区に入り、火災を起こしたと報じた。アムールイトウは体長1メートルを超えることもある大型魚だ。しかし、釣り目的だったとの情報は裏付けられておらず、モビコム側は全面否定している。
KDDIが23日に公表した説明によると、モビコムは国境地帯の通信環境を改善するため、国境警備隊の各拠点に4G通信網を整備し、スンベル国境検問所まで光ファイバーを敷設。幹部らは6~8日、開通式への出席と通信品質の現地確認のため訪問していた。
日本人の越智康博CEOら社員7人が車2台に分乗し、当局の車3台に前後を挟まれて移動していたという。同社は釣りや狩猟、飲酒運転などの違法行為はなかったと説明。一方、モンゴル当局による火災原因の調査は続いている。
出火原因や幹部らの訪問目的を巡る議論が続く中、中国メディアは、今回の火災が来春の黄砂に影響する可能性を指摘している。
新華社通信は24日、日本の国立環境研究所の王勤学研究員の見解として、秋から翌春にかけての草原火災の発生状況と、春の砂じん嵐の発生日数には関連性があると報じた。火災によって地表を覆う植物が減少すると、土壌が風による侵食を受けやすくなり、地表の土砂なども風によって運ばれやすくなるからだという。ただし、今回の火災によって来春の黄砂が実際に増加するかどうかは、今後の調査が必要だという。












