政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首(59)をナタで襲撃した宮西詩音被告(32)に対し、東京地裁は9日、懲役9年(求刑懲役12年)の判決を言い渡した。公判では使用したナタや閃光弾のほか、排水パイプ用洗浄剤も所持していたことが明らかにされ、殺意の強さが改めて浮き彫りになったが、動機は判然としないままだった。
宮西被告は昨年3月14日に東京・霞が関の路上で千葉県知事選に立候補し、選挙活動をしていた立花氏に握手を求める振りをして、左手で所持していた甲高い音と光を放つ音響閃光弾(フラッシュバン)を足元で炸裂。注意を引き、右ポケットに隠していた刃渡り約16センチのナタを立花氏の頭を目がけて振り下ろし、側頭部をかすめた。追撃するためにナタを両手で持ち直して振り下ろしたが、立花氏がステップバックしたため、届かなかった。近くにいた人に取り押さえられた。
検察側の被告人質問で排水パイプ用洗浄剤のパイプユニッシュをカバンに潜ませていたことを問われた宮西被告は「一発入れるのに成功したら追い打ちをかけようかと。タンパク質とかを溶かす強力な洗剤で、傷口から脳にまで浸透して、致命傷を与えられる」と淡々と述べた。実際に使用することはなかったが、執拗な殺害方法を思案していたことで法廷内に戦慄が走った。
立花氏を狙った動機は不可解なままだった。フリースクールに通っていた高校年代から政治に不信感を持っていたが、2019年の参院選にネットを主戦場とする立花氏が立候補した際、「面白いことをやっている。新しいタイプの政治家かな」と一票を投じたという。一方で、同被告は「SNSは動物園。中傷しあって不快な場」とSNSアカウントなどは持たずに距離を置いていたという。
「(立花氏は)議員として活躍してくれるかと思ったらいきなり辞めたり、迷惑系YouTuberとつるんだり、人を中傷したり、当選する気もないのに選挙に出たり、ポスター掲示板を有料にしたりで、なんでこんな人を支持したんだろう」と〝立花劇場〟に愛想を尽かしていたという。
国民生活が窮する中、2021年の東京五輪の開催をきっかけに政治家への殺意が芽生えたものの、「ふさわしい人がいなかった」とターゲットが絞れない中、昨年1月に元兵庫県議が自殺し、「立花は人を中傷して自殺に追い込む人間だった」と殺害を決意した。
元県議の自殺と立花氏の因果関係を示す情報をどこから得たかを再三問われたが、「ネットのニュースで見た記憶はある。車内のニュースや図書館で見た新聞とかあいまい」と述べ、特定のテレビ番組や報道機関に触れることはなかった。短絡的ともいえる理由に裁判官は心理鑑定を行った臨床心理士に対し、「ほかに動機があって、隠している可能性はないのか」といった趣旨の質問も出るなど動機面では疑問が残った。
宮西被告は起訴内容を認めた一方、被害者参加制度を利用し、出席していた立花氏から「友達になろう」と法廷内で更生の協力を申し入れられたが、最後まで「立花」と呼び捨てにして、謝罪の意思をを示すことはなかった。
判決で江口和伸裁判長は「重量のあるナタを再び大きく振り下ろし、死亡する恐れがあった。3週間で済んだのは幸運。犯行態様は極めて悪質」と断罪し、宮西被告には「いずれ社会人になります。その際、多くの人と接して話をしてください。きっと友人ができるでしょう。周りの人がどう思うか、ともに考えてみてください」と諭した。控訴権利があるとの説明を受けた際には首を横に振り、判決を受け入れる姿勢をうかがわせた。












