ネパールと中国の国境近くで8月26日に発生した大規模な土石流と洪水で、死者は31日、合わせて919人に上った。計4793人が行方不明となっている。救助活動は続いているが、犠牲者がさらに増える恐れがある。そんな中、被災地では数々の〝奇跡〟も起きている。

 ネパール北部では、土砂とがれきに埋まっていた6歳の少女が、災害発生から3日後に救出された。捜索を続けていた救助隊が、がれきの下からかすかな泣き声を聞きつけて発見。少女は約60時間にわたり生き埋めになっていたが、無事に救出され、治療を受けた後、両親との再会を果たしたという。28日にネパール当局が救出時の映像を公開した。

 一方、水力発電施設のトンネルなどに取り残された人々の救出活動も続いている。ネパール軍などは、トンネル周辺から作業員ら計208人を救出。このうち43人は外国人だった。生還した作業員の一人は、濁流が押し寄せた際「逃げる時間は20秒しかなかった」と証言している。

 ネパール中北部のヌワコットでは、災害発生から4日目に発電所作業員5人が奇跡的に救出された。ネパールメディア「オンラインカバル」が30日、報じた。

 作業員のサンタマン・ティンさんは、発電所内に濁流が押し寄せた瞬間を「突然、爆弾が爆発したような音がした。何も見えなくなり、呼吸も苦しくなった」と証言。トンネル内には腰の高さまで水や泥、土砂が流れ込んだ。「私も、どうやって外へ飛び出したのか自分でも分かりません」と振り返った。

 脱出後も救助は来ず、5人は夜になると再び洪水が来るのを恐れ、高台の岩の隙間に避難。「私たち5人は3晩ずっと岩の隙間で寝ました。4日目になって、ようやく救助されました」と九死に一生を得た。

 また、ネパールでは校長の決断が1643人の全校生徒を救ったことが31日、現地メディアで大きく報じられた。ヌワコットのトリブバン・トリシュリ中等学校のラジェンドラ・ダワディ校長は、26日午前9時10分ごろ、洪水を警告する電話を立て続けに4本受けた。「大洪水が来ている」と娘を迎えに来た保護者の姿も見て、即座に全校避難を決断。すでに登校していた約900人の生徒を高台へ逃がすとともに、登校中の生徒を乗せたスクールバスも引き返させた。そのわずか10分後、濁流が学校を襲い、校舎や寄宿舎は泥とがれきに覆われた。

 16歳の女子生徒ユニシャ・アマティヤさんは、友人に助けられながら高台へ逃げ「私と友人たちは、わずか10秒の差で助かったんです。目の前で市場が洪水に流されていきました」と証言。校長は「あと10分遅れていたら、生徒も私も誰一人、今日ここで話すことはできなかったでしょう」と振り返った。

 別の学校でも、校長の機転が大勢の命を救った。ダディン地区のバゲシュウォリ中等学校では、洪水が迫っているとの連絡を受けたギャヌ・タパ・マガル校長が即座に避難を決断。朝礼のため集まっていた生徒416人と教師27人を安全な場所へ逃がした。その直後、学校は濁流に襲われ、全17教室が浸水した。校長は「学校は建て直せます。でも、生徒が無事だったことが何より大切です」と語った。

 中国チベット自治区の吉隆県では、中国人民網が31日、被災した5村の住民499人全員が5か所の避難所へ安全に避難したと報じた。一方、中国側の主要被災地域では30日午前6時時点で「新たな生存者は発見されていない」とされ、ネパールのような〝奇跡の生還劇〟はこれまでのところ、あまり報じられていない。